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メキシコ大統領のビセンテ・フォックスは2000年12月の大統領就任前から、メキシコ南部諸州と中米全域での大がかりな工業開発計画を呼びかけていた。
その三ヶ月前、メキシコ南部のオアハカ州の『ラス・ノティシア』紙は、フォックスが米州自由貿易圏を促進し、「野心的な地域開発計画」"をおし進めるために中米を訪問すると報道していた。
一週間もたたないうちに彼はグアテマラ・シティを訪問し、自分の新しい計画を「三つのP、プラン・プエブラ・パナマ(PPP)」と命名した。それは、この計画が対象とする地域を指したもので、中米全7カ国およびメキシコ南部のカンペチェ、チアパス、ゲレロ、オアハカ、プエブラ、キンタナ・ロー、タバスコ、ベラクルス、ユカタンの諸州を含む。
中米各国政府の指導者は早くからPPPへの支持を表明したが、多くの地域住民はますます懐疑的になっている。エルサルバドルの経済学者で消費者保護センターのディレクターのラウル・モレノは、PPP後の世界では「中米は多国籍企業に奉仕する大きなコンテナトラックで一杯の高速道路のようなものになる。私たちはみんな道路の脇でスナックや果物を売ることになる」、と物売りがトラックにひかれるのをまねながら言う。
実際、確かにPPPはグローバルな通商における輸送ニーズを満たす事を目指している。パナマ海峡はいまや通航量が極めて多く、合州国はその権益をすでに失っている。そのため多国籍企業は新たな地域輸送ルートを探しているのである。
ここ何年かメキシコ、ニカラグア、ホンジュラス、エルサルバドルは高速道路、鉄道、さらには太平洋と大西洋を結ぶ水路にいたるまで次々に提案してきた。PPPは太平洋―大西洋連結ルートや、両海岸沿いに中央メキシコとパナマを南北に結ぶ高速道路建設を含んでいる。
フォックスは米州開発銀行(IDB)ディレクターであるエンリケ・イグレシアスを長とする強力なセールスチームを自身の計画のために集めてきた。PPPの財政委員会には国際金融公社、世界銀行、米国国際開発援助庁、デンマーク国際開発援助庁、およびいくつかの国連機関の代表も名を連ねている。
委員会は米国の戦争と景気後退にも関わらず、ゆっくりでありながらも着実にPPPを促進させている。9月11日の米国に対する攻撃のちょうど一週間後に、メキシコの海外取引銀行はPPP地域に対する3億ドルの投資を、半分はホテル開発に、半分は繊維産業と製造業に対して行う事を発表した。
続く何ヶ月かの間に、日本の投資家は、石油と大規模ダムを基本とする中米での大掛かりなエネルギー相互連結事業を支援することに同意し、中米経済統合銀行(CABEI)は1億3500万ドルを港および高速道路の建設用にエルサルバドルに貸し付けることを発表した。
メキシコ政府の2002年のPPPに対する経費は7億4300万ドルで、昨年度のメキシコ南部における連邦支出の二倍を上回っている。うち80%以上が高速道路、港湾および他のインフラ開発に投資される。PPP推進の中核を担うIDBとCABEIは計画の重要な要素として「人間開発と持続可能な開発」を口にするが、予算の数字を見れば工業インフラ整備が優先であることは明白だ。PPPに関する公式な情報によれば計画には三つの主な目標がある。
@地域の輸送・工業インフラを拡充し輸出産業の能力を向上させる。
A地域経済を農業からマキラドーラへ移行させるよう触発する。
B広大な自然資源に対する民間管理を拡大する。
南メキシコはある点では中央メキシコと北メキシコよりも中米と共通点を持っている。オアハカとホンジュラスは識字率(成人の1/4近く)が同じである。ユカタンは乳幼児死亡率がエルサルバドルよりも高い。経済的には南メキシコの最も重要な「輸出」は、中米諸国と同様、毎年北メキシコとアメリカ合州国へ仕事を探しに行く何千もの若い移住労働者かもしれない。
移民を減らそうという合州国の圧力の中、フォックスはPPPの下、南部にマキラドーラを誘致し、移住しようとする者を国内にとどめることで状況が緩和できるのではないかと期待している。この姿勢は合州国の政策立案者にへつらうものとして批判を浴びている。また、フォックスが2000年7月の大統領選で破った長年政権の座にあった制度的革命党(PRI)が支持していたのと同じような経済民営化モデルを促進している事に対しても非難が浴びせられている。
実際、PPPはもともとPRIによって出された提案である。かつてPRIの幹部であった(そして現在のフォックス政権における権威)サンティアゴ・レビーがフォックスの大統領選勝利の一ヶ月前にPPPの基本的な考えを初めて提示したのだった。
レビーの計画はProcede(連邦政府の「エヒード権付与・都市土地区画権原プログラム」の頭文字をとったもの)の拡張を通じてもっと多くの民間資産を開発のために確保することを含んでいた。9年前に世界銀行が考案したこの計画は、共同体が所有する土地を民間の個人所有に変え、それにより自給農業用の小さな土地をもつことになった新しい所有者が土地を売りやすくし、資金のある投資家が大規模な土地を取得しやすくするものである。
土地の私有化はフォックスのPPPを下から支え続け、そのゴールである製造業の拡張を達成させる為の重要なポイントとなり、この地域の自然資源を民間・営利部門がより多く管理できるようになってきた。こうした事情から、メキシコの農業改革省はPPPを実行する為に必要とあらば先住民族や農民の共同体の土地を収用することもあり得ると述べているほどだ。
PPPに関する基本的な公式文書の中のメキシコの章によると「この地域の漁業、農業および石油資源は国家にとって非常に重要である。地域の資源の中には有効利用されていないものもある」。
最終的にPPPが成功するかどうかはメキシコ先住民が快くその家と農地を手放すかどうかにかかっており、彼らが喜んでそうするという証拠は全くないのである。サパティスタと他の多くの先住民族の地域組織はPPP反対の立場を計画が発表されるやいなや明らかにした。
2001年2月に1万人以上の人々が参加したオアハカ市の集会で、サパティスタの副司令官マルコスは「我々を無視したどんな計画もプロジェクトもいらない――PPPであれどんな計画であれ、先住民の土地を売ったり破壊したりするようなものはいらない」と宣言し、熱烈な歓声を受けた。
*ウエンディ・コールは南メキシコのTehuantepec峡谷に住み現代国際問題研究所(Institute
of Current World Affairs)の研究員として執筆活動を行っている。
二年前にメキシコに移る前、彼女はシアトルとボストンの社会変革組織に10年間勤務していた。
wendycall@world.oberlin.edu
*この翻訳は筆者の了承を得て掲載しました。
訳・馬目美奈子 |