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2.一般的概念
2.1 生物多様性
生物学的多様性または生物多様性とは有機体の多種多様性と可変性、および有機体がその一部を構成する生態的複合体を指し、3つのレベルがある。遺伝子の多様性、種の中の多様性、そして生態系の多様性である。これら3つのレベルの多様性は生命の体系のきわめて異なった相を指し、異なる方法で測られる。各々のものに代替はないのである。
遺伝子多様性は種の中の遺伝子のバリエーションを指し、その種の特殊集団という形態をとることもある。たとえばトウモロコシ、フリホール(豆)、唐辛子、チピリン、マツ、スギ、マホガニーなどの栽培されている種のうち何千もの昔から知られたバリエーションの場合がそうで、これら一つ一つは農民によって特定の名前が付けられている。バリエーション、すなわち生態類型(ecotipo)の数は人間の手によって土地に適合されたものであれ、野生のものであれ、ある種の中の遺伝子多様性を測る一つの指標となる。遺伝子多様性はまたある集団の中の遺伝子多様性も指す。種の多様性は一つの地域における種の量のことである。
生態系の多様性とはある環境の中の有機体の集合体と、それらがその下で生きている自然条件を含む。生態的多様さは、さまざまな森林やマングローブ、湿原などの成熟し管理された自然生態系から、人間の活動に依るとはいうものの特徴的な動植物の集合をもつさまざまな農業システム(単一作物栽培、共同耕作など)まで含む。
ある地域の生物多様性を示すパラメータはさまざまである。それは異なる種のさまざまな生態類型(ecotipo)、種類、集団によって、種の多様性の豊富さによって、属、科、さらに上の分類レベルの配置によって、土地特有の種、珍しい種または絶滅の危機に瀕している種の生息環境、季節移動する種が使うまたは必要とする生息環境、環境保護地域や社会的、経済的、文化的重要性をもつ生物多様性などに現れる。
人間の文化的多様性はある国の生物多様性の一部であり、言語、宗教、土壌管理方法、芸術、音楽、社会構造、作物の選定、食生活、その他の人間社会の属性の多様性に現れる。過去においては、生物多様性を維持し発展させてきた価値は、しばしば文化的な知恵や人々が受け継いできた実践に組み込まれていた。
2.2 社会、社会発展、生物多様性
実際の生物多様性の発展と自然一般の変化は自然と社会を結びつけるさまざまなプロセスに従っている。というのは人間は広範な必要を満たすべく、自然から得る物やエネルギーの操作、変容、蓄積、消費、また、生物圏に還っていく残り物や廃棄物を出したりといったさまざまな関係を自然との間に築くからである。確かに周囲の状況が人間の活動のあり方や文明の発展に影響を与えるが、人間の自然への影響も再生可能および再生不可能な天然資源の現状を決定づける要因となる。人間と自然との間には相互的、互恵的な関係が築かれており、そこではスンケル(Sunkel、1980年)によれば「ある社会の発展の潜在的可能性はかなりの程度生態基盤と天然資源に依存しており、一方発展の形態と程度は直接その物質的基盤に影響する」のである。
3.グァテマラにおける生物多様性と自然の変化
「霞のごとく、雲のごとく、砂塵のごとく、水の中から山々が現れ出て、それはたちまち大きくなり、大地が生まれた。奇跡によって、魔術によってはじめて山々が出来、谷間が造られた。そしてたちまち地上には杉林や松林が生えていった。」「まず大地と山と谷が造られ、水の流れが分けられ、せせらぎが山々の間を自然に流れ、高い山々が現れるところで流れを分けていた。」「その後森の守番として山の小さな動物たちを、山の精として鹿や鳥やピューマやジャガーを、葦草の繁みの守番として蛇や蝮を創造したのである。」(『ポポル・ヴフ』)
3.1グァテマラにおける生物多様性の概観
グァテマラは北半球の亜熱帯に位置する国であり、地表のほぼ60%が山で覆われるという著しく山がちな国である。生態的にも多様で、高度は海抜0メートルから4,000メートルまでわたり、降雨量も年間400mmから4,000mmまでと地域によって大きく異なる。
高度がさまざまに異なるという変化の多様さは、気候、地形、土地の変化につながり、生息環境および生態系の多様性とそれに伴う動植物のバリエーションを生みだす重要な要因となっている。これはまた生産可能な作物の多様性と活用可能な生態的形態の多様性をも生みだしている。
こうした要因によって、比較的小さな面積の空間(108,889km2)に少なくとも14の生命圏をもつ、生態的・自然地理的コントラストが生まれているのである(De
la Cruz, 1982年)。半乾燥地帯における森林から常緑雨林(暑いところから寒いところまで)、広葉樹温帯林、針葉樹林、そしてさまざまな湖沼系にいたるまで多様な生態系を見ることができる。この生態系の多様さがグァテマラの生物多様性の豊富さの基礎を成すのである。
グァテマラはその面積の割には、多様性とバリエーションという意味では世界でも最も豊かな植物相をもっている。8,681の高等植物(Pinophytas
および Magnoliophytas)が報告されており、うちいくつかの集団は高い多様性をもっている(Standley とSteyermark,
1961年)。
たとえば、次のような科が多様性に富む(それぞれ属と種の数を記す)。キク科(143属、449種)、
ラン科(39属、516種)、ノウゼンカズラ科(37属、76種)、 スギ科(19属、184種)、 そしてノボタン科(27属、157種)である。一部の地域ではある特定の属、たとえばきわめて乾燥した森ではLeaucaena
またはミモザが多様化している。一方、国の全土でパイナップル科などは14の属、124の種をもち、他方Tilandsiaのように一つの属で60の種をもつものもある。
同様の多様性は動物にも言え、1979年時点で250の哺乳類、231の爬虫類、88の両生類、664の鳥類(季節移動をしない鳥が480、渡り鳥が184)、そして220の淡水魚が存在することが報告されている(Dary、
1979年)。
グァテマラは世界の栽培植物の巨大センター12の一つ(メキシコ南部と中米)の一部を成し、この地域からトウモロコシ、フリホール(frijol
comunおよびfrijol piloy)、guisquil、カカオ、カボチャ、トウガラシ、アボカド、タバコ、綿花、ハゲイトウその他の栽培種が生まれた。
湖沼は約1,151あり、うち湖が7、潟湖が365、沼が779である。高度別の分布を見ると、80%(916の湖沼系)が海抜0メートルから200メートルの間に位置し、残りは200メートルから3,590メートルの間に位置する。全国の湖沼系を県別に分析してみると54%(620の湖沼系)がペテン県にある。これは海底が最近(過去1500万年の間)隆起したためである。メキシコ湾沿岸の斜面には682の湖沼系が存在し、水面面積の59%、278.49km2を占める。太平洋沿岸には357の湖沼系があり、水面面積の31%、245.23
km2を占め、アンティル諸島では112の湖沼系が水面面積の10%、682.98 km2を占める。過去300万年の間に4つもの大きな湖が消滅し、過去数百年で少なくとも30の湖沼系が消滅した(Castaneda、
1995年)。
3.2 グァテマラの地質の起源
グァテマラは地質学的に見てきわめて活発な地殻の上に位置しており、これは現在の火山活動にも現れている。今日の南米大陸は約1億6千万年前にはアフリカ大陸とつながっていた。ジュラ紀の終わり頃の約1億3千万年前、旧大陸の一部が東に向かって移動し、今日の南米大陸が切り離された。同様に原アンティル諸島と呼ばれる小さな島々が出現し、時間の経過とともに北東へ移動し、現在のアンティル諸島が形成された。1億年前にアフリカは南米大陸から完全に分離された。
白亜紀の終わり頃の約8千万年前、中央アメリカの北部の地殻の一部が主に火山活動によって隆起し始め、現在のチアパス高地、グァテマラ中央部と南部の山岳地帯の一部、ホンジュラス、エルサルバドル、ニカラグア北部を含む中米の中核が出来上がった。デンゴ(Dengo、1969年)によると、中米北部が盛り上がったのは地殻プレートの割れ目から噴き出した火山物質によるものである。ゆっくりと、何百万年という時間をかけて中米が出現したのである。約6千万年前、中米北部を含む北米が海によって南米から切り離されることになったが、デンゴによれば、この部分は他の地質学者によって中米海峡と名付けられた。
地質学的構造および歴史との関係では中米北部は北米大陸の一部を構成する。後にやはり火山活動によってニカラグア南部とコスタリカを成す弧が出現した。二つの地殻プレートが互いに衝突する際にしばしば山々が形成された。アンデス山脈とクチュマタン山脈は太平洋プレートが東へと移動するのに伴ってゆっくりと隆起し続けている。
現在の中米南部(ニカラグア南部、コスタリカ、パナマ)は海中の突出部から生まれた。そこではカリブ海の外側が太平洋の方へ押された結果、小さな島々の場合と同様、一群の火山島が形成された。中米の群島が続いて出現し中米の残りの部分が形成されたが、これらはすべて約2百万年前に起こった。ちょうどパナマのまだ水面下にあった小さな部分が「出現」し、ついに中米と南米が結びついたときである。
メソアメリカ群島の出現と後の中米地域の形成によって、動植物が北から南へ、南から北へ移動することが可能となった。このため、中米には非常に多様な動植物が北でも南でも見られるのである。
まとめれば、中米の隆起は何百万年もの間に地殻プレートの割れ目からの火山物質の放出によって出来上がった。このためグァテマラと中米の中央高地の土壌の大部分が火山活動によるものであり、一方大西洋岸西部、たとえばペテン、ベリーズ、ユカタンなどの平地の土壌はあまり発達しなかったのである。つまり、中央高地の土壌は何千万年の時間をかけて造られ、その間に植物相と気候が形成されたが、ペテンの土地は多くがカルスト地形であり、長い時間をかけて形成されたものではなく、そのため土壌が浅いのである。ペテン南部の一部の岩盤は主として約1千万年前の中新世時代の海洋石灰岩である。
3.3 グァテマラと動植物の移動の流れ
古生代と中生代の時期からの堆積物の上に形成され、高い山々からなるこの古い地層をもつ地域はいわば一つの「島」を形成し、その中で動植物が洪水や火山活動の時期に自らを適応させながら生きながらえてきた。このようにして白亜紀の終わりからこの地域の高地ではまず植物が、続いて動物が継続して生息する環境が整えられたのである。
グァテマラは新熱帯地帯(neotropical)の一部であり、そのため地理学的に見ると、地域に固有のもの(最初の移動以降に進化したもの)と新熱帯地帯の他の地域(米国南部から南米のマゼラン海峡にいたるまで)からの移動に加えて、北半球からの動植物の移動の影響を受けることとなった。
グァテマラに移動してきた植物、動物の種は、次に掲げる3つの主要な拡散パターンのうちのいずれかに従ってきた。
a) かつていまよりもっと暑かった北米は白亜紀(6千5百万年から1億4千万年前)に寒くなり始め、これにより南への移動が起こった。
b)更新世(およそ2百万年前)には氷河が現れ、これによっても多くの種がそれ以前の北と似た気候であった南へ移動した。
c)北から、また南からの移動回廊ができると、この回廊の状況に適応したどの種もこれを通って移動する能力を潜在的にもつことになった。中米は生物が北と南の両方の方向から移動した、また現在も移動する種にとって自然の回廊なのである。
d)北から移動した植物グループには、針葉樹(イヌマキの類を除く)の大部分、ブナ科(カシの類、Quercus属)、ヤナギ科(ヤナギ、Salix属)、マンサク科(フウLiquidambar
styraciflua)、カエデ科(Acer)、バラ科(クワRobus sppおよびカミツレCrataegus pubescensなど)、クルミ科(クルミJuglans)その他多くが含まれる。
d)南米から移動したグループには次のようなものがある。ラン科、クワ科(イチジクFicus)、ヤシの木、ビンロウジュ科またはヤシ科、サポジラ科、大シダ類(Cyatheaceae科、Cyathea属およびAlsophyla属)、スギ(センダン科)、および貴重な木材となる熱帯樹木、たとえばユリノキ、シナノキなど(Cybistax
Donnell-Smithii)、マホガニー(Swietenia spp)、コナカステ(Enterolobium cyclocarpum)など。南から移動した唯一の裸子植物であるイヌマキ科の3つの種(Podocarpus
guatemalensis、P. oleifolios、P. Matudae)はグァテマラのさまざまな場所に存在している。
植物の移動過程はその祖先が北もしくは南からやって来たという意味で動物にも当てはまる。
ランド(Land、1970年)によれば、グァテマラの高地は白亜紀の終わりごろ(約7千万年前)から動植物が生息していた。また、鳥の中の多くの種は北(Holartica地域)の種や科、また南(新熱帯地域)の種や科と類縁関係にあるという。しかし、ちょうど栽培植物の原産地のように、メキシコ最南東部(チアパス)の高地およびグァテマラ北東部にしか見られない種も存在する。
シチメンチョウの一種(pavo de cacho)(Oreophasis
derbianus)、chinchivirin montanero(Troglodytes rufociliatus)、chipe
rosado o platinado (Ergaticus versicolor) そしてjilguero encapuchado
(Spinus atriceps)などの科学的に貴重な種は上記の地域にしか見られず、そのうちのいくつか、とくにシチメンチョウの一種は絶滅の危機にある。これらの土地に「固有な種」(その一部は世界でもメキシコ南部およびグァテマラの高地だけに見られる)は、高地地域が過去の地質変化の過程で孤立していたためにそこで特有の発達を遂げたと推測される。
<グァテマラにおける種の豊富さの要因>
a)比較的古い地層。
b)生物地理学的な分布センターの間または異なる生物地理学的地域(holarticaと新熱帯)の間の地理的状況。
c)熱帯と亜熱帯の間の推移状況。
d)南北に連なる山脈の形成により、北半球と南半球の間の移動回廊ができたこと。
翻訳:藤岡美恵子
<訳注>文中、植物名などの訳については出来る限り翻訳チームで調べましたが、どうしても不明なものが残りました。ご容赦下さい。また中には適切な訳語ではないものもあるかと思いますが、正しい訳語を御存知の方、是非ご一報下さい。
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