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社会問題研究所(Center
of Concern's)の季刊新聞『センターフォーカス』第1号(2003年2月/3月号)から転載
アメリカ合州国政府と大企業、そして多国籍銀行は急速な貿易自由化と輸出重視の開発計画を中米で推し進めている。計画は中米地域の環境や地域経済、そして周縁化された人々への影響の点から見ると、きわめて大きな影響をもたらすであろう。この脅威に対し、地域の人々は自ら学び、結集し、そして、潜在的に破壊をもたらすこの政策への代替案を作っているのである。
2003年1月、米国は正式に5つの中米諸国―グァテマラ、ニカラグア、エルサルバドル、コスタリカ、ホンジュラス―と中米自由貿易協定(CAFTA)を今年度中に結ぶという目的のもと、貿易交渉を開始した。CAFTAは、カナダと米国、そしてメキシコの間で結ばれた自由貿易協定である、北米自由貿易協定(NAFTA)の拡張の手本となるであろう。
貿易関係者と大企業は、CAFTAが西半球全域(キューバを除く)を対象とする現在交渉中の自由貿易協定、米州自由貿易圏(FTAA)への道を開くものと期待している。CAFTAはまた地域の「開発」計画であるプエブラ=パナマ計画(PPP)を推し進めるものとして期待されている。現在すでに中米の一部ではPPPが進行中である。
10月に筆者は、米国に本部を置くグァテマラと米国の女性労働者の間の連帯を促進する組織、STITCHが組織した、グァテマラへの米国女性代表派遣団に参加した。この代表派遣団を通じて、私はグァテマラの女性労働者と会い、直接彼女たちの生活を、また彼女たちがその協定によってどのような影響を受けると考えているかを学んだ。グァテマラ全土から来た参加者たちはCAFTAとPPPについて議論した。
彼女たちと、そして最近のニュースから判断するに、そのほかすべての中米の人々は、これら貿易の自由化と民営化、そして開発計画を望んではいないことが分かる。にもかかわらず、貿易交渉者たちはこれらの協定をほとんど議論もなしに推し進めようとしているが、CAFTA、PPP、そしてFTAAに対する抵抗が中米で広範囲に、とくにこれらの協定がもっとも影響を与える女性や先住民族、労働者、そして貧困にあえぐ人々や小農民の間で起こっている。
CAFTAの交渉は非民主的に、そして非公開に行われている。米国と中米の市民団体が情報と交渉参加の権利を拒否されている間に、すでに交渉は、参加者を企業団体と金融エリートに限定して始められている。情報の欠如にもかかわらず、私たちは交渉者たちがどのような立場で議論し、そしてどのような多くの結果が現れるかということを、この10年間のNAFTAの経験から予想することができる。CAFTAはたとえば、保健分野や教育などの公共サービスの民営化、環境保護や労働者保護法の低下、そして中米の農業破壊をもたらすと考えられている。これらはすべて重要な社会的関心事である。
中米の貿易自由化
この年始、米国からメキシコへの農産物輸入品のほとんどすべての税、割り当て、制限がNAFTAの一環として廃止された。メキシコの農民は、これからはメキシコに比べて30倍以上の補助金を受けている米国の農産物と競争しなければならないのである。これは自給自足であったメキシコの農業の終焉と、米国からの輸入食物への依存を導くことになると予想される。
メキシコ全土からのカンペシーノ(小作農民)組織が、NAFTAにおける農業問題に関して一時停止を要求するために集まった。もし中米が補助金を受けている米国との競争にさらされるのであれば、何百万もの人々が工場で働くために都市へ移住を余儀なくされるか、または危険を侵して米国へと行くことになるであろう。そしてCAFTAは、中米地域で米国政府の支持を受けて多国籍銀行と大企業が画策している総合計画の一部に過ぎないのである。
CAFTAは地域の巨大開発計画であるPPPの経済的骨組みを作るために計画された。PPPは、南部メキシコから7つの中米諸国にかけて、外国資本をひきつける目的のためにインフラ整備を整えるものである。提案されるインフラ整備は、高速道路、複数の海港と空港、地域の電源と電力市場の単一化、多くのダム、少なくとも二つの新しい石油精製所と輸出加工区、多くのマキーラ(低賃金で悪条件の工場)を含む免税特区などである。
しばしばその計画はメキシコのビセンテ・フォックス大統領の発案とされるが、実は世界銀行と米州開発銀行(IDB)が長年中米地域で推し進めている開発計画パッケージなのである。PPPは一般に100億USドルの予算が見込まれているが、250億ドル近くかかるかもしれない。そのお金は主に納税者の税金と世界銀行、IDBとそのほかのこの計画を推し進めている巨大な開発銀行からの融資によるものである。こうした融資は、地域が抱える巨大な債務(税金によって返済されている)負担をさらに重くし、すでに貧困状態へとおとしめられている中米の労働者に支払いの負担を負わせることになる。
中米はとても豊かな自然資源をもち、しかし貧困率も極めて高い地域である。PPPが実行される地域の6500万人もの人々のうち75%は一日2ドル以下で暮らしている。これらの地域はまた、100以上ものそれぞれ独立したグループである先住民族が集中している地域でもある。NAFTAのもと、メキシコでは先住民族と小作農民の土地の権利を保護する法律は撤廃された。
PPPが開発計画として進められているにもかかわらず、最初に充当された資金の84%近くが当てられたのは、高速道路の建設と改良工事である。これらの高速道路はまず米国企業によって商品を運ぶために利用されることが考えられ、何十万人もの主に貧しい人々と先住民族が強制移住を余儀なくされるであろう。PPPによってもたらされる強制移住は、NAFTAのもと行われた先住民族と小作農民の土地に対する権利の剥奪と対になったものである。
米国の多国籍企業はPPPに関心を持っている。なぜならそれは地域の石油や鉱物、木材、観光地域や生物多様性を含む多様な天然資源へのアクセスを容易にするからだ。PPPは環境と先住民族コミュニティに対して大変な悪影響を与えると考えられている。
25を超えるダム建設が、地域の新たな産業化と同時に米国市場のためのエネルギーを生み出すために計画されている―何千エーカーもの先住民族の土地とコミュニティ、そして都市までもが水の中に沈むことになるのである。加えて、製薬会社と遺伝子研究企業は新たな植物の収穫と微生物の「新発見」の特許化に関心を持っている。実際、彼らは地域の先住民族の人々が幾世紀にもわたって利用してきた植物や薬、そして技術に対して法的権利を主張し、そこから利益をあげることを追求するだろう。
PPPは根底にある貧困の問題にとりくむことはしないであろう。しかし支持者たちは、貧困は仕事の創出によって軽減すると断言している。マキーラ、すなわち、輸出向け生産専門の衣料品工場は、地方の移住を余儀なくされた労働者を受け入れると期待されている。しかし、こうした悪条件の工場は、低賃金、長時間労働、そして組合の不在が特徴として挙げられ、国際的に認められた労働者の権利を侵害すると考えられているものだ(中米のほとんどすべてのマキーラからの輸出品は米国向けである)。
グァテマラのマキーラ
グァテマラで私は、マキーラの労働者で労働組合を結成しようと試みている女性に会った。現在、220以上のマキーラがグァテマラで稼動している。これらの工場は最初の10年間は免税措置を享受し、その後は新しい会社と合併するか閉鎖する。米国との協定は、75%の原材料は無税で米国から輸入しなければならないと規定し、米国の輸入品物への依存状態を作り出している。
マキーラのセクターはきわめて不安定で、労働者たちは工場がさらなる低賃金や、またはもっとゆるい環境基準の土地を求めて移転したり、工場誘致のための特別措置が貿易協定から段階的に廃止されていくかまたは両立しないと見なされて、その結果失職するのではないかという途切れることのない心配を持ち続けているのである。
ある地域で、私は二つの工場の労働者と会った。ほとんどのマキーラと同じように、およそ90%の工場労働者は若い女性である―多くがシングルマザーで、地方の先住民族コミュニティ出身だ。女性労働者には仕事の保障がほとんどない。彼らは男性労働者よりも長く働き、賃金は男性よりも少ない。
私はマキーラ労働者のソニアという女性の家を訪ねた。ソニアは、シングルマザーで4人の子どもを持ち、リズ・クレイボーン・インターナショナルのために服を作る会社で働いている。彼女は他の多くの同僚たちと同じように、不法居住地に住んでいる。この7万人のコミュニティでは、多数の家が水と電気を持たず、多くの女性が自分たちの週給の85%を水を買うために使っている。ソニアは彼女の仕事を「みじめ」と呼ぶ。それはきわめて過酷で、速いスピードを求められ、ボスはスピードについていけない労働者には誰であれ脅しをかける、と言う。
ソニアは彼女の汗と苦役が工場所有者を金持ちにしているだけだと気づいた後、労働組合を組織することを決めた。彼女と他の100人が組合作りを支援したことが分かると、そのせいで自分たちが仕事を失うのではないかと恐れたそのほかの労働者たちから彼女は殴られ、危うく生きたまま焼かれそうになったという恐ろしい体験を語ってくれた。それでも、ソニアとそのほかの私たちが会った人々は、労働組合と、自分たちが労働者として尊敬される権利のために闘っていた。
広がる抵抗運動
地域における貿易協定と開発計画の危険が差し迫る中、一般の人々への教育が広まり、その結果、労働者、小作農民、先住民族、女性クループなどによる抵抗と抗議が広がっている。2002年10月12日(米国にとってはコロンブス記念日、米州のそのほかの地域では、先住民族の抵抗の歴史または文化的遺産を祝う日である)、少なくとも4万人の中米の人々がPPPに対する抗議の共同行動に参加した。
彼らは高速道路の要所や国境を占拠し、抗議の行進とデモを行った。これらのグループは、PPPによる環境、先住民族コミュニティ、そして地域経済への影響を重点的に訴えた。また、2001年3月以降行われたPPPに関する三つの地域会議(そのほかホンジュラスで2003年3月に開かれている)では、CAFTA、PPP、そしてFTAAすべてに反対の声が上がった。
10月12日、私はグァテマラのケツァルテナンゴという小さな町の教会で開かれたPPPの会議に参加した。会議はメサ・グローバル(www.mesaglobal.org)が主催し、スペイン語と二つの先住民族の言葉、キチェー語とマム語によって行われた。参加者は、グァテマラ各地から来た小規模の女性団体や、農民のコミュニティ、土地の権利を求める団体、そしてPPPについて学び、情報を得たい先住民族コミュニティの代表として来た先住民族の女性たちであった。
彼女たちは、伝統的な先住民族の生き方を続けることは、外部から押し付けられる政策に対して不断に抵抗することであると一致して考えている―彼女らは500年間もそのように生きてきており、そして今PPPと自由貿易協定に抵抗しているのである。発言者らは、開発に反対しているのではなく、先住民族や女性の意見を取り入れようとしないすべての企てや計画に対して反対するのだと明言した。
彼女たちは「地域共同体社会を主体とし、人間的、政治的、社会的、経済的そして文化的権利を基礎とし、世界の人々を再び活気付けるであろう」代替案を示した。「私たちは、億万長者たちが提案するのではない、私たち自身の開発を行うことが可能である」。キチェー語で一人の女性が主張した。
会議の後、女性たちは「PPPにNOを、地域開発にYESを」、「私たちの土地は売り物ではない」と主張するプラカードを持って街の広場に出た。女性による小作農民の運動はグァテマラの社会運動において不可欠なものであり、そしてこれらの女性がグァテマラの希望を支えていることを社会分析専門家は主張する。
最近、中米とメキシコの全土で、自由貿易協定と、民営化、開発計画に対する抵抗が広がっている。この数ヶ月間、メキシコはNAFTAとFTAAの農業協定に対する大きな抵抗運動の場となっている。エルサルバドルの人々は「抵抗の季節」を宣言し、特に保健分野での民営化の廃止と、CAFTAの停止を要求した。ニカラグアでは、多様なグループの幅広い連合がCAFTA交渉への真の参加を要求し、水を含む公共サービスの民営化に抵抗した。彼らは殺人や誘拐など、政府による弾圧の増大に直面している。この事態を受けて、最近行われた中米司教会議は、貿易協定は不平等だとする公的宣言を発表した。
世界中で、新自由主義の貿易協定と輸出志向の産業化は大多数の人々のニーズにあわないという欠点を見せ始めている。中米では、現在の「開発」モデルは、精力的な投機的投資と、公共サービスの民営化と、労働者と環境権への圧迫の継続と、そして貧困下の人々、先住民族、女性の周縁化をさらに促進している。それでも企業主導のこのグローバル化に反対する運動は規模、強さ、多様さを増しており、政策立案者や大企業はもはや多数者の意見を完全に無視したままでは彼らの計画を実行しえなくなってきた。
中米の社会運動は、貪欲で権力にまみれた利益志向のシステムから、人間主体の、人権と平等、環境保護、そして持続可能性を基礎とした新しいモデルへと流れを変えることができるという希望を与えてくれる。
ファラ・フォッスは世界女性計画(Global
Women's Project)のプログラム・アシスタントで、ジェンダーと貿易国際ネットワークの情報コーディネーターである。
http://www.coc.org/pdfs/coc/cf/2003/cf159
_02_03_trade.pdf
Center of Concern
1225 Otis St NE
Washington, DC 20017
USA
(翻訳=川崎弥智都)
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