反差別国際運動(IMADR)グァテマラプロジェクト

「プエブラ=パナマ計画」と中米-グァテマラの先住民族関連資料

 

 

もう一つのコペンハーゲン宣言

 

一九九五年三月八日国連社会開発サミットNG0フォーラム

       

       私たち、社会運動やNG0、市民団体を代表として、世界社会開発サミットのNGOフォーラムに参加した者は、世界が本質的に一体であり、相互に依存しているという共通認識をもった。その一方で、人種、民族、文化、宗教上の教義といったあらゆる多様性を内包し、すべての人々に対する正義と公正を何よりも優先し、そのためにあらゆる努力と試みがなされる世界において、民主的な原則と参加がすべての人々に保障され、最終的には長い間切望されてきた平和的、協調的、そして持続的な文明の創造が可能となるだろう。

       

       こうした文脈において、私たちは社会サミットで貧困、失業、社会的分裂、環境悪化の構造的な原因が取り上げられ、人々を発展過程の中心に位置づける宣言が出されることを期待していた。そこには経済的、政治的、社会的な原因だけでなく、性差別を生み出す文化構造も含まれる。

       

       サミットの交渉過程では、重要な課題にある程度の進展が見られたが、宣言に盛り込まれた経済的枠組みが、公平で持続的な社会開発の諸目標と、基本的に矛盾すると、私たちは考える。宣言は、国内と国際経済の統合をすすめる基礎として予測のつかない「開放的自由市場経済の力」に依存しすぎているが、それは、現在の地球規模の危機を軽減させるよりむしろ悪化させるだろう。こうした誤った前提がある限り、社会サミットで決まった目標の実現は危うい。

       

       開発の普遍的なモデルとされてきた支配的な新自由主義体制は、失敗であった。債務を抱えている多くの国々では、経済・社会開発へと投入されるべき資源が海外へ流出しており、その負担が限界にまできている。世界銀行と国際通貨基金(IMF)によって強いられた構造調整プログラムは、賃金抑制や小規模生産者の生産と生計の縮小、社会サービス、とくに医療と教育を貧困層の手の届かないものとすることにより、一貫して経済.社会的な進歩を遅らせてきた。構造調整プログラムによって国家が行うべき基本サービスが実施されなくなり、栄養や健康、家族の幸せと一体感を担ってきた女性の負担はさらに重くなった。また構造調整は、天然資源の急速な輸出拡大や経済の規制緩和をつくりだし、周辺の土地に追いやられる貧しい人々を増加させ、生態系の悪化を招いた。

       

       この体制によって、経済と政治、技術、組織に関する権力、食糧などの貴重な重要資源の管理は、一握りの多国籍企業と国際金融機関の手に集中することになった。それは人間の幸福より何より、経済成長を優先させる体制であり、女性の時間と労働、性を搾取している。新自由主義体制の下では、社会的、環境的なコストを外部化させる資本の論理が優先される。そこでは雇用なき成長、労働者の権利の縮小、労働組合の役割低下が加速される。こうした過程で、女性たちは過度の負担を強いられ、健康と幸せが危機に瀕している。その結果、女性たちが世話をする人々の健廉と幸せも同様の危機に陥ることになる。最終的には、国内外での不平等な資源利用をもたらし、社会的差別を生み出し、人種差別や内紛や内戦を加速させ、女性と先住民族の権利を侵害する。

       

       こうした理由から、私たちはウルグアイラウントの最終宣言と、世界貿易機構(WT0)設立の合意事項として調印された、新たな貿易体制への公式文言を受け入れることはできない。関税と貿易に関する一般協定(GATT)とWTOによる貿易の自由化が勝者よりも多くの敗者を生みだすこと、その悪影響は貧しい国々とそこに住む民衆と労働者に破滅をもたらすこと、をこの文言はいっさい考慮していない。海外投資、生物多様性と知的所有権などの分野で、地方生産者の利益が損なわれる。

       

       途上国の社会政策を「社会的セーフティ・ネット」(社会開発サミットの文書では「人間の顔をした」構造調整政策と表現されている)に限定する考え方に、私たちは反対する。これは、国家の基本的な責任の放棄につながる考え方である。「北」が、予算削減のために社会的支出を切り捨てることは、福祉国家が達成した多くの成果を後退させるものでもある。

       

       社会開発は、すべての個人と民族にすべての人権---市民、政治、経済、社会、文化といった---が実現されることによってのみ達成される。私たちは、サミット文書が、社会の全分野で参加型で実りある社会開発をすすめる前提条件として人権を最優先することを十分に認識していないと考える。とくに子供たちや障害者、先住民族、占領地に住む人々、難民や避難民がそうである。

 

また文書は、構造調整プログラムの非民主性が、市民の権利を脅かし、抑圧につながることさえある点にも触れていない。さらに社会サミットで見られた、女性の権利についてウィーンの世界人権会議とカイロの国連人口会議で結ばれた合意を後退させようという試みは、公正な社会を創るために必要な根本的な変革の可能性を阻むものである。

       

       最後に私たちは、軍事化によって莫大な人的資源、天然資源、資金が無駄に費やされていることを記しておく。それは、さらなる不平等と困窮、そして女性に対する暴力、地球規模での死者、難民と避難民の増加に拍車をかける紛争を含む政治的、社会的な暴力を作り出している。

       

       私たちはいま支配的な世界経済モデルを拒否しているが、別の普遍的なモデルを押しつけようとは考えない。むしろそれは、コミュニティの必要に応じて地域からの解答を作り替え創出する問題であり、男性と全く平等である女性の能力と技能を引き出し、新たな技術と価値ある伝統の利点を引き出すという問題である。

       

       以上の観点から、私たちはオルタナティブな開発というビジョンを実現させるために、家庭・地域・国家・国際といったレベルにおいて、次のような条件が満たされなければならないと考える。

       

【家庭レベル】

 

                新たな開発のビジョンには、女性が平等に意志決定過程に参加できるように男女の社会的な関係を作り替えることが必要である。

                女性と男性とが、共に子供や高齢者、そして障害を持つ人々への世話をする責任を共有しなければならない。

                いかなる家庭内暴力も許されてはならない。

                「性と生殖に関する櫨利と健康」が、女性に保障されなければならない。

                子供の権利が尊重され、保障されるべきである。

       

【コミュニティ・レベル】

 

                開発を効果あるようにする鍵は、公平、参加、自立、持続可能性および、コミュニテイ生活への総体的アプローチにある。

 

                コミュニティの資源を保証する能力が回復されなければならない

 

                開発のあらゆる段階での政府および政府間決定は、社会運動、市民組織、コニュニテイの参加の下になされねばならず、その際とくに女性の平等な参加に注意が払われるべきである。

 

                コミュニティは、その暮らしに影響を及ぼす多国籍企業を含むあらゆる企業活動を管理する必要がある。

 

                若者、とくに若い女性の政治的、社会的、経済的な力が高められるべきである。

       

 【国家レベル】

 

                性・人種・民族・階級・年齢・身心の障害、宗教に基づくあらゆる形態の抑圧がなくされるべきである。

 

                政府は、経済政策の決定過程や他の開発政策の決定や実施、モニタリング過程において、市民社会の完全かつ平等な参加を保障しなければならない。

 

                教育は、社会においてふさわしい地位を占める権利を若者に与え、彼ら自身の人生が思い通りに進むこと可能にする主要な手段としてみなされなければならない。非専門家の経験や技術を重視する形式にとらわれない教育が促進されるべきである。

 

                政府は、権力体制と政策決定の全レベルにおいて女性の完全かつ平等な参加を保障しなければならない。

 

                女性の無償労働が計算され、含まれるよう、国民経済計算体系を見直すべきである。

 

                政府は人権宣言に基づく自らの責任を果たすために、国の戦略や実行計画を発展させなくてはならない。周縁化されたグループが法手続を自由にとれるため政府が何をしたか、その進展状況を、政府は定期的に報告せねばならない。

 

                「女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」を批准していない政府は、それを批准すべきである。政府は、国連の「先住民の一般的な権利に関する条約草案」の承認のために努力すべきである。

 

                先住民族の先祖伝来の地の領有権と自決権の承認と尊重は、民族と文化の生存を保障するために必要不可欠である。未だに植民地とされている領土にも、彼らの主権と自決権が適用されるべきである。

 

                政府は持続可能な農村経済の基盤となるべき農業改革を実施し、人々自身が雇用を生み、コミュニティを創出できるよう、貧しい人々が借りることのできる融資を性、人種、民族を問わず行うべきである。

 

                政府は、労働組合と雇用者組織との完全な協議によって持続的な雇用計画を開発すべきである。

 

                先進工業国政府は、持続可能な生産と消費パターンを実現させるために、環境に配慮した税制改革、規制、環境コスト計上制度など適切な諸方策を導入し、天然資源に対する過度の要求を減らすようにすべきである。

 

                南の政府は、とくに食糧安全保障と国内の食糧生産において、貿易の自由化と規制による影響から人々を守る権利がある。

 

                政府は、軍備費を医療費や教育費以下に削減し、軍備の平和目的への転換を進めなければならない。この「平和の配当」は社会開発のための軍縮基金として、国内そして国際的に平等に分配され、軍事経済から市民経済への転換がなされるべきである。

       

【国際レベル】

 

                新しい南北間のパートナーシップには、先進国ではなく途上国の文化、開発の選択肢、長期戦略を優先させることが必要である。

 

                文化的多様性は、オルタナティブな下からのグローバリゼーションを生み出すという点で、新たな力、新たな主体、新しい社会システム、持続可能な発展の重要な源泉となることを認識すべきである。

 

                途上国の二国間、多国間、民間償務は、構造調整の条件を強制することなく早急に取り消すべきである。長期的には、国際社会は公正な交易条件の制度化をするべきである。

 

                世銀・IMFによる政治的貸付けおよび主権国家に対する内政干渉は中止すべきである。

 

                ブレトンウッズ機構は、南北の市民社会に対して透明でなければならず、また責任を持たなければならない。

 

                世銀・IMFの政策・プログラムは民衆中心であるべきであり、合意交渉、プロジェクトの実施、モニタリングの全段階における社会運動および市民組織の参加が保証されるべきである。

 

                世界のマクロ経済政策は貧困の構造に取り組み、実質購買力の向上を促すものでなけれぱならない。消費の民主化につなげるために、国家間、国内双方における所得と富の分配に十分に取り組むような代替的なマクロ経済政策が必要である。このためには経済における浪費的な賛沢品志向を低減し、資源を基本的な消費財や社会サービスに向けることが求められよう。

 

                世界の生産・消費は地球が耐えられる範囲内に抑えられるべきである。世界市場システムにおいて、家庭、コミュニティ、国家、人類を無視する無責任な行動が幅を利かせ続けることがないようにするためには、政治的規制が必須である。

 

                多国籍企業および国際金融機関の独占的構造や行動を禁止し、民衆の基本的人権を尊重させるためには、真に民主的で効力のある、規制制度および統治や法の手段を確立しなければならない。そのためには多国籍企業の規模の縮小が必要である。また、国連の「多国籍企業規制憲章」策定に向け、作業を早急に再開すべきである。

 

                多国籍企業の行動および各国、コミュニティ、民衆、環境への影響を監視、評価し、効果的に規制するためには独立の国際機関と責任メカニズムが設置されるべきである。

 

                国際社会はすべての投機的為替取引への○・五%の課税(トービン税)を実施すべきである。その収入は適切な管理メカニズムのついた世界社会開発基金に組み入れられる。

 

                再生可能なエネルギーの利用を推進する効果的な国際機構を国連システムに含めるべきである。

 

                地域機関・国際機関は外交、平和的交渉、仲裁を推進し、非暴力的な紛争解決のための調査・養成機関の設立を促進すべきである。

 

                社会開発サミットから世界女性会議までの一八○日で、世銀・IMF活動に対する独立の調査および監査を行うことを要求する。メキシコの財政危機を鑑みるに、ブレトンウッズ機構が金融界、産業界、アメリカ政府および先進国の蔵相によって決められる課題に従い続けることによって生ずる大問題を防止することが、国際社会にとって最重要事項である。

       

       現存する権力関係のままでは上記の目標を達成できない。私たちは市民社会を代表する者として政府および政治的リーダーたちに対し以下の事実を認識するよう求める。現存するシステムは、富裕で、過剰消費をする少数者と、南の、そして北においても増加している貧しいその他大勢の間に、人類の歴史上に例をみない危険な溝を生み出していると。これほどまでに分断された国家はかつて安定を保ったことはない。いかなるフロンティアであれ勢力であれ、失敗したシステムにより、絶え間なく生み出される絶望感と敵対感情をなだめることはできない。

 

       私たちに残された時間は少ない。私たちは子供たちに自分自身が住みたいとは思わないような世界を託そうとしているのである。しかしながら、社会サミットに参加した世界大のNGOコミュニティが人類と自然の、永続的な向上のために、これだけ力強く共通理解を育み、戦略を設定すること可能にした事実は、大いなる示唆と希望を与えるものである。責任を共有することで、私たちは真に機能する国際社会の形成に必要な創造力を、現在の危機のうちに見出すことができる。私たちはコペンハーゲンを去ろうとしているが、まさにこれこそが私たち共通の公約である。

 

社会サミットヘの提言

       

      国連社会開発サミットNGOフォーラム日本準備会

 

      第二次大戦後、世界の生産力は著しく拡大した。わけても北の諸国はめざましい経済成長を遂げ、空前の豊かな生活水準を享受するようになった。科学技術も大きく発達し、今では人を宇宙に送ることもできるし、居ながらにして世界の情報に接することもできる。だが、工業化に基づくこの富は同時に、地球の生態系を乱し、また、地球人口の数倍を抹殺するに足る核兵器・大量殺りく兵器を蓄積するに至った。

       

      この時期に、第三世界の多くの国々が独立し、人権概念が飛躍的に強まり、地球社会の発展に新しい展望が開けた。だが、それにもかかわらず、南の世界では広汎な人口が依然として衣食住・保健・教育・職等の基本的必要を満たすことができず、貧困に喘いでいる。そればかりか、近年の市場経済拡大を通じて、基本的ニーズの不足、人権の剥奪に苦しむ貧困人口はむしろ増大さえしている。国際開発援助が制度化されているにもかかわらず、南北間の富と所得の格差は一段と拡がり、南北対立はかえって厳しくなっている。

 

       また、北の世界でも新興工業諸国の勃興や市場拡大に伴う企業の多国籍化、オートメ化、合理化を通じて、失業問題が激化してきている。失業はとりわけ、中高齢者、女性、障害者等「社会的弱者」の生活に大きな影響をあたえている。日本でも終身雇用制・年功賃金制の解体が始まっており、「完全雇用社会」の神話は崩れ始めた。

 

       南北問題の拡大、生態系の破壊等から、世界的に経済難民・環境難民の数も激増し、大量人口移動時代が始まっている。この現象は、各国国内での貧富格差の増大とあいまって、人種差別感情、排外主義を一部の国・地域で生み出している。世界社会、またそれぞれの国内でも社会の一体性は著しく脅かされていると言わなければならない。

 

       一九八○年代以降の「新自由主義」時代以来、世界的な市場経済拡大時代に進行した世界レベルでの社会問題の激化は環境問題の深刻化とあいまって、地球社会の将来に紛争と破壊の暗雲を投げかけている。この事実を国連が認識し、一九九二年の環境サミットに引き続き、世界社会開発サミットが開催されることをわたしたちは歓迎する。

       

       しかしながら、宣言・行動計画案が前提としているように、今日、世界の社会問題が経済成長を続けることによって解決するとは、わたしたちは考えない。貧困、失業、社会的分裂は経済成長が不足しているからではなく、従来の経済成長を優先した開発思想、開発政策、開発路線からもたらされたことを、わたしたちは最初に指摘しておきたい。このような開発路線は同時に北の国の人々や南のエリート層の大量生産.大量消費を前提とした生活様式に支えられてきた。従って、貧困、雇用、社会続合の問題にわたしたちが真剣に取り組んでいこうとするならぱ、それは必ず物の生産の絶えざる増大を社会目的とするのではなく、人間の福祉と安全の保障を中心におき、人と人、人と自然の関係を重視するような、持続可能な開発路線の方向への社会目的の転換を導かなければならない。このような開発モデルの転換は必ず民衆中心的なものであると同時に、わたしたちの価値観、生活様式の転換に支えられるべきものである。

 

       このことを最初に批判点として指摘したうえで、わたしたちは日本政府の社会サミットヘの対応がきわめて遅れ、このままでは宣言・行動計画の実施さえ危ういことを残念に思う。従って、以下、社会サミット宣言・行動計画の主要項目に関し、とりわけ日本との関連で、一〇の提言を行いたい。

 

       

一 今日の貧困は決して天然自然のものでもなければ、グローバル化する市場経済から疎外されていることから起こるものでもない。むしろ、不平等な世界経済秩序と市場経済の展開から絶えず新しい貧困と格差が起こることを認識し、北の国、とりわけ従来の自由主義的秩序の中で大きな利益を得てきた日本は、より公正な新しい世界経済秩序の実現に努める責務を負うている。それはつまり、経済的社会的また文化的発展をすべての人に可能とさせるような国際環境の実現のための国際社会との協力に一段と努力することにほかならない。そのため、コペンハーゲン・サミットに村山首相自ら出席して、村山政権の唱える「やさしい日本」の具体的な対外・社会政策を国際社会に示すことを要請する。

 

       

二 この社会サミットに日本が全力を挙げて取り組み、サミットでの宣言、行動計画を誠意をもって実行していくために、早急に国内本部を設け、各省庁及び民間諸団体の連携体制を作ること。この本部で日本の社会開発状況に関する報告書を毎年作成すること。日本はこれらの取り組みが大きく遅れている。

 

       

三 上記の新しい世界経済秩序では、すべての人びとの人権と人間としての尊厳が尊重されるべきである。日本は、未批准の国際人権関係諸条約、ILOの諸条約・勧告について、批准日程を定め、これを国際社会に明示すべきである。

 

       

四 政府開発援助(ODA)の○・七%目標実現とともに、借款部分が多いODAの質的改善に努めること。また、ODAの大部分がインフラストラクチャーに向けられている現状を改め、その半分以上を直接人間生活を向上させる社会開発支出に向けること。第一段階として、日本0DAの五%を国内及び海外のNG0事業を通じて支出すること。一%を開発教育に向けること。

 

       

五 アフリカ及び最貧諸国の累積債務に対して、一九九四年ナポリ・サミットでの合意を尊重し、削減を行うこと。また、円高で借款の元利返済に苦しむ諸国に対し、一定部分を削減すると共に、現地通貨・商品での返済を認めること。

 

       

六 世界的な軍縮気運に呼応して、防衛費を年三%削減し、これを社会開発関連援助基金、軍民転換基金に組み入れる。ODA大綱(一九九二年)で示した武器取引、軍事支出、核・大量破壊兵器開発のモニタリングを行い、これを援助の実行とリンクする。

 

       

七 世界銀行、IMF等ブレトンウッズ諸機関の民主化に努め、WTO等新設機関をも含めた国連システムの諸機関や多国籍企業が経済的社会的弱者に及ぼしうる圧力や悪影響について監視する。

 

       

八 女性、障害者、被差別部落出身者、先住民族、在日外国人、高齢者、子ども等、日本社会の中で、周辺的立場にある人びとや社会集団の人権、社会的・経済的・政治的参加を強めていくこと。とりわけ、アイヌ新法や部落解放基本法など、法制によって、被差別者たちの自立と社会的統合を促進していくことが重要である。これと並行して、第二次大戦中の日本の侵略行為による被害者たちの補償に誠意をもって取り組むこと。厚生省が企図している東京での戦没者追悼平和祈念館を日本の引き起こした侵略戦争による国内外の犠牲者の記念歴史館とすること。

 

       

九 社会開発の実行・実現については、市民セクターの参加が不可欠である。しかし、日本では政府と企業・業界の連携は強固だが、市民・非営利セクターの政治的意思決定過程への参加が遅れている。非営利セクター・NG0に対する免税等の活動振興措置を整備すると共に、政府の各審議会に市民・消費者・NG0の代表を参加させていくぺきである。また、企業の取締役会に労働者、住民、消費者代表が参加していくべきである。

 

       

一〇 国連活動の二本柱は安保理事会と経済社会理事会である。しかし、今日のグローバル社会の要請に対応した活動を展開するためには、国連改組が必然となっている。安保理事会については、大国の拒否権廃止による民主化と地域的な代表選出が課題となっている。経済社会理事会については政府とNGOの合議制による活性化の展望が開けてきている。国連、地域機関、専門機関、そして政府・地方自治体等、地球社会のあらゆるレベルで情報公開と市民参加が課題となってきている。日本はこのようなグローバル・レベルでの市民社会の発展に貢献するべきである。

 

       

       以上一〇項目の提言は主として日本政府に向けたものであるが、わたしたちは日本政府がこれらの提言を誠実に実行していくことが、社会サミットの宣言・行動計画の実行をさらに豊かなものとし、世界的な社会開発の進展とその過程での国境を越えた人間同士の対話、すなわち世界市民のネットワーク作りに大きく貢献していくものと確信している。

 

       また、これらの提言が実現されるためには国民各層の幅広い同意と支持が不可欠である。わたしたちは、阪神大震災に際して、世界中の政府、NG0、民衆からの援助と苦しい境地への連帯の意思表明を感謝の念をもって受け止めた。困難の中で人びとは結ばれる。世界の苦しい立場におかれた人びととの共感、国民の地球的連帯感と共生の意識も一段と高まってきていると、わたしたちは考える。世界の人びとに感謝の意を表明しつつ、わたしたちはNGO、民衆団体と国境を越えた協力をすすめ、世界的な市民社会の形成、人間・民衆を中心においた発展方向の実現のために一層努力していきたい。これからの世界で日本の平和的進路も、グローバル社会の発展なくしては決してありえないのである。

 

      訳--社会発展NG0フォーラム

 

      (西川潤編『社会開発』、189-232頁)

 

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