「プエブラ・パナマ計画」と中米-グァテマラの先住民族

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プエブラ・パナマ計画:

新自由主義の地域的戦略の進展か、それとも共同体を起点とする統合的持続可能な開発の新戦略か?(1)

アレハンドロ・ビジャマール(RMALC) 1

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1: メキシコで政権がビセンテ・フォックス大統領に委譲(2000年12月1日)される4ヶ月前、1993年の北米自由貿易協定(NAFTA/スペイン語名ではTLCAN)の批准により公式にスタートした、合州国経済に大きく依存した経済統合のプロセスをさらに一歩進める、経済的・地域政治的な戦略が公表された。

 その後、フォックス大統領の中米諸国訪問の際におけるプエブラ=パナマ計画に関しての積極的な発言2 から、2001年の年始会見での、いわゆる「南部・南東メキシコ振興」計画に関わる様々な事業を支える為の財政支出要求に至るまで、21世紀のメキシコの方向性がどのようなものであるべきかを問う国内の戦略的議論が練られ始めたのである。

 その議論の要は、

 南部・南東メキシコの各州から中央アメリカ諸国に至るまで(相互)依存的な経済統合モデルをよりいっそう深め、展開していくこと(プエブラ=パナマ計画と呼ばれる公的な2事業)、並びに、

 コミュニティレベルから統合的であり、公正であり、すべての分野にわたって、メキシコ南部・南東部の各州と中米諸国にとっての持続可能な新開発戦略を展開していく、というものである。

2: 二つの戦略(経済統合モデルの展開、持続可能な開発戦略)とも、前歴があり、何年にも渡って前進や後退を繰り返してきた。中央アメリカにおける新自由主義戦略は、NAFTAの難点をコピーしたような、貿易・金融条約の実施を通じた諸国間の連帯でもって開始した。

 メキシコ政府は、まず1995年にコスタリカ政府と2国間協定を結んだ(ただしコスタリカ政府は中央アメリカの経済統合には後ろ向きな姿勢であり、メキシコよりむしろアメリカ合州国を志向しており、今回の協定はメキシコの政治・経済的に力のある団体が及ぼした影響によってなされたものである)のを皮切りに、ゆっくりながらも他の国々にもこの流れを広げていった 。3

 中央アメリカの人々の利益に対して影響が大きいこの戦略は、既に「2001-2006年政府計画レポート(初版4 )」で明らかにされている。ここでは【目的】として以下のように書かれている(1・12)。

 『ラテンアメリカとカリブ海地域が一つの自由貿易地域として開発戦略(更には複数の開発戦略)を立ち上げられるような関係を構築していくこと。』

 また、この目的はとりわけ、

 『中米地域の国家における様々な政治・経済・社会形成にメキシコが参加していくことを促進していく』

 ことが謳われている。

3: 国内、すなわち南東部の各州に目を向けると、これまで連邦政府は少なくとも、サリーナス大統領(当時)独自の自由化とNAFTAにより開かれたいわゆる『アメリカ合州国への窓』を活用するべく、制度的革命党(PRI)の知事に対して白紙の小切手を発行してきた。

 キンタナ・ルー州とユカタン州では熱心に労働力の吸収と低物価地域が設定されたのである。同時に、労働組合に対しては反民主的な対応がなされ、繰り返し環境が破壊されてきた。こうしたことは海外からの観光と土地に麻酔を打つような交通整備への投資、さらには低賃金労働集約モデルが無差別的に再生産されることでさらに促進していった。

 しかしながら、非効率性、反民主的システム、差別、知事や地域有力者(マフィアなど)の汚職といったものも、様々に活発に動く社会抵抗運動と同様に、自由化の促進の障害となっている。だが、ビセンテ・フォックス大統領が中央アメリカ諸国歴訪においてコスタリカのサンホセに南部・南東部各州のPRI派知事を集め、プエブラ・パナマ計画への支持で合意したことの政治的意義は非常に大きい。

4: 本質的に新自由主義的とはいえない部分の戦略に関しては歴史的に深い根がある。PPPでの政府間における関係はメキシコと中米諸国間の南南協力における例外的で実践的な唯一の絆として捉えられている。

 政治的な協力関係は1991年の『トゥクストゥラ合意』より開始され、メキシコは中米諸国間に存在する不均衡と民主制確立の為に連帯する重要性を理解していく姿勢を強化している。この政策は代替的経済統合の過程を進めるうえで重要且つ有用な一歩となった。

 あいにく自由貿易協定の悪影響のため、経済統合推進への取り組みが弱まることが懸念されていたのである。地域内で見ると、様々なコミュニティレベルの生産と代替的発展、更には政治的寡頭支配やカシーケ、さらには協定やプロジェクトからなる新自由主義的分野別政策に対して、様々に否定的な意思を掲げたローカルレベル・地域レベルの抵抗運動における共闘促進など、多種多様な経験が蓄積されてきている。

 世界的に知られているサパティスタ抵抗運動や、ホテル建設や石油開発、貴重な動植物の密猟にさらされているメキシコ湾岸カリブ海及び熱帯雨林の環境保護運動から、地域的な市長連合や社会・先住民族団体、環境運動家などのアピールに至るまでの様々な運動により、テワンテペック地峡(el Istmo de Tehuantepec)におけるプロジェクトのような巨大プロジェクトの意義に対する再考が促されているのである。

5: 地域的自由貿易協定及び米州自由貿易協定は新自由主義的な論理に立脚している。貿易や金融に関する協定が過去六年にわたってメキシコと中米諸国の政府と次々に結ばれているが、これらはひとつの依存的経済統合が広く再生産されるプロセスの法的枠組みであり、社会や環境に貢献する為の活動を制限し、南南協力を制限してしまう。

 こうしたプロセスで特徴として浮き上がっていることとして、移住労働者に関する合意や、メキシコ国内にはびこる不均衡への認識が抜けて落ちている一方で、北米自由貿易協定の影の側面、とりわけ全ての自由化に向けた措置が大企業と機関投資家に利益を与えるものとなっているという面が再生産されているということがあげられる。

 この戦略は地域における支配的なエリートや大きな利益団体は北米社会に押し付け、さらに米州自由貿易協定(又は1994年の「ブッシュ・イニシアチヴ」)を通じて他のラテンアメリカ・カリブ海地域までに広げようとしている構図を踏まえて、メキシコが「扇の要」としての新しい役割を得るべく「メキシコ版」を打ち立てたもののように思われる。

 これとは別に、地域的貿易協定拡大のプロセスを、「メキシコと他のラテンアメリカ諸国が貿易交渉をすることを通じて拡大するということは、少ない時間で自由貿易に関する部分的な見通しを確保し、協定締結への合意を実現するために必須のものである。

 しかしこれはラテンアメリカにおける共通市場を創設していく上での、貿易自由化の一つの条約に過ぎない。(強調部は筆者による)」というメキシコ高官の見解もある 。5

 だが、こうした考えは、明らかにこれまで結ばれてきた貿易や金融関係の合意や協定に見られる性質が、米州自由貿易協定を盾に、アメリカ合州国と巨大企業連合によるゲームと支配のルールでもって西半球全てに自由貿易地域を作ろうとするアメリカ合州国のイニシアチヴの性質・戦略 に一致しているという事実とは矛盾している。

6: メキシコとアメリカ合州国政府がメキシコ北部で力を入れて推進し、ローカルなレベルで拡大における限界と困難が日に日に明るみになってきている依存的経済統合モデル は、メキシコ南部・南東部各州及び中米諸国においてほぼ征服的に君臨する空間を見つけることとなったのである。

 この空間とは持つものが地域的も世界的にも戦略的に所望の資源を獲得し、こうしたことを通じて新自由主義的モデルを拡大し再生産する多大な可能性を獲得するための空間である。

 メキシコ南部・南東部各州はメキシコの水資源の大半を有しているほか、化石燃料、多様な生物資源、熱帯性多湿林、海岸観光地域、文化観光地域を内包している。さらにこの地域は先住民族人口とその土地の文化が息づいている密度が最も高い地域でもある。

7: ここで言うメキシコ南部・南東部各州への新自由主義的モデルの拡大と再生産は、2001年-2006年政府計画の初版より『地域で支持される発展を達成する』と掲げられている目標のような政府高官の考え方や、政府を悩ませる歴史的な後進性をより薄めようとする南部・南東部各州の事情に如実に現れている。

 しかしながら、地域における望ましい発展に関する政府公式見解では論理一貫性がなく、理念と政策との乖離が著しい。例えば、政府の公式見解では地域や地元産業における経済的特性を認める必要性、さらにはローカルレベル、地域レベルの発展を促進させる地域の法律や制度の発展が必要であることについて断言しているのに対し、同時に『発展・開発』を外向け、輸出指向に支配された形で定義し、実際にそれを強いているのである。

 こうした矛盾をばねに、『メキシコの南部・南東部におけるマキラドーラ(低賃金労働集約型産業)の展開』や、観光巨大プロジェクトの振興、さらには、対外交易に有利なインフラ整備が、こうしたタイプの『発展・開発』の本質的な柱にされてしまうのである。

8: メキシコ南部・南東部への開発計画に関する政府の見解は、公式には以下のように述べられている。

 『グローバル化の利益がメキシコの隅々まで確実に届くようにするべく、政府は南部・南東部各州の構造変革を促進することを中期的目標にした長期的戦略を作成した。

 このプログラムは地域における生産的潜在能力を抑制する障害を取り除くことを目的にした大掛かりな計画に組み込まれており、このプログラムの遂行によって、開発が促進され、北アメリカだけでなく中米諸国を含めた国内・国際市場の統合を有利に運ぶことができるのである。

 前述の地域戦略により、この地域において、近年交渉が進んでいる貿易と投資における国際協定がもたらす機会を利用することができるのである 。』8

注)

1 この記事を書くにあたり、ガブリエラ・ランヘル、アルベルト・アロヨ、マリア・アティラノ・アンドレス・ペニャロサの各氏には貴重な助言と情報を頂いた。各氏に心から御礼を申し上げたい。

2 シグロ21、プレンサ・リブレ(いずれもグァテマラ紙)、ラ・プレンサ、ラ・ナシオン(いずれもホンジュラス紙) 2000年9月11日―13日に掲載。

3 ニカラグアとの協定(1998年7月1日DOF)と、いわゆる中央アメリカ北部三角地帯(グァテマラ・エルサルバドル・ホンジュラス)との協定がコスタリカとの協定に続く動きである。この二つの協定は2000年12月に批准され、2001年2月に発効した。この批准手続きの間にも、ベリーズとパナマとの交渉を続け、一連の中央アメリカ地峡諸国の協定を完成させようとしていた。

南アメリカ諸国とは、メキシコは1995年1月より、コロンビアとベネズエラとの協定(3カ国協定)、ボリビアとの協定を結んでいる。1999年6月にはチリとの貿易法を制定し2000年にはドミニカ共和国に対する貿易法も制定している。メルコスール諸国とは現在も交渉を続けている。

4 「2001-2006年政府計画 初版 計画形成・国際的キャンペーンへの合意・個別分野でのプロジェクトコーディネーション」2001年1月。32頁。(以下PdG2001-2006と記す。)

5 前傾PdG2001-2006、32頁。

6 http://www.asc.laneta.orgにおける米州自由貿易協定の文責と代替案参照。

7 公式非公式問わずこれに関しては多くの評価・分析がある。これまでの蓄積は以下を参照のこと。www.cocef.org (環境協力に関する国境地域委員会;LA COMISION FRONTERIZA DE COOPERACION AMBIENTAL)、 http://www.nadbank.org (北米開発銀行;EL BANCO DE DESARROLLO DE AMERICA DEL NORTE)、http://www.epa.gov/usmexicoborder/ef.htm または http://www.semarnap.gob.me/ucai/Frontera_XXI/indice-fron.htm、または http://www.irc-online.org/borderline/1999/bl55.htm または http://www.rmalc.org.mx など(21世紀米墨二国間国境地域計画;EL PROGRAMA BILATERAL FRONTERA XXI)

8 『2001年財政に関する連邦政府の支出予算案プロジェクト』の理由説明及び政令発布、IV.3項:地域開発刺激策、69頁。http://haceta.cddhcu.gob.mx/ にて入手可能。及びこの文書の付属書参照。

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*この文書は"EL PLAN PUEBLA PANAMA: EXTENSION Y PROFUNDIZACION DE LA ESTRATEGIA REGIONAL NEOLIBERAL, O NUEVA ESTRATEGIA DE DESARROLLO INTEGRAL Y SUSTENTABLE DESDE LAS COMUNIDADES."の全文の日本語訳です。筆者の了解を得て翻訳、掲載しました。

訳・中村隼人.

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