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IMADR-MJPグァテマラプロジェクトの目標は自治と自決をめざした先住民族のエンパワメントの促進にあります。これが意味するのは、一言でいえばマヤの人々が自分たちの言語、文化、アイデンティティ、価値観、コスモビジョンに立脚して共同体をベースにした自立的な生活が送れるようにすることです。このプロジェクトはこれを実現するために重要な役割をもつ「教育」に焦点をあてるものです。
プロジェクトのこれまでを振り返ってみると、今後の課題は基礎教育を受けて生活向上を図るという実利的目的の教育から、先住民族のエンパワメントを促進する内容をもった教育への質的発展、そしてプロジェクト自体の持続性の2点に集約されます。以下に、より具体的な課題を整理し、今後の活動計画について述べたいと思います。
方向性と課題
<基礎教育活動>
実利的目的の教育から先住民族のエンパワメントを促進する内容をもった教育への質的発展というときに、まず課題になるのは、コミュニティの人々自身がどのような内容の教育を何のために、どういう方法で行うのかについて議論を深めていくのをMJPおよびIMADRが促していくことです。この議論を深めるプロセス自体が、実は「教育」そのものであり、コミュニティのエンパワメントにつながると考えるべきでしょう。
同時に、グァテマラ国内で(あるいは他の国々で)蓄積されてきた、公教育とは一線を画した先住民族の文化・価値観・言語にもとづく、コミュニティのエンパワメントを志向した教育活動について調査・研究を行い、教材、具体的な実施方法、教育活動のための人材育成、活動の組織化について学び、私たちのプロジェクトに取り入れていくことが必要になってきます。これをプロジェクトチームとMJPが協働作業で行うことが課題です。
ここで私たちが留意したいのは、しばしば見られるように外国の経験や国際機関・NGOが開発した教育方法論などをそのまま適用することは、先住民族の自決を目指したエンパワメントの実現には結びつかないということです。他の先住民族や民衆教育の経験を参考にしながらも、マヤの共同体・民族の中で培われてきた教育の内容と方法をもとにそれに工夫と改善を加えていくという基本姿勢が重要だろうと思います。
<民衆教育>
和平合意(とくに先住民族のアイデンティティと権利に関する合意)の内容や履行状況に関する学習は、リーダー以外の住民に対するフォローアップが一つの課題です。これは、1998年に行ったワークショップのような一過性の形態よりも、基礎教育教室で取り上げる内容に反映させていく、生活改善委員会などコミュニティ内のさまざまな組織の活動の中に位置付けていくように働きかけるという方法を追求する段階に来ていると考えます。合意の内容を抽象的に伝えても、それはコミュニティが抱える問題解決法を探る過程で直接応用できるものではなく、人々の意識や考え方に影響を与える知識とはなり得ないからです。
よって、基礎教育教室ではマヤの歴史・グァテマラの歴史や文化、慣習、コスモビジョンなどについて、すでにさまざまな団体によって開発されている合意学習のための教材を活用する、また、コミュニティの年長者からコミュニティが培ってきた労働や自然との関係、社会組織についての知恵について学ぶ、という方法を通じて取り上げていくことを目指したいと思います。
若者リーダーやコミュニティ全体の組織化にどう生かすかについては、直面している課題(例えば後述するコミュニティラジオプロジェクト)にとりくむ際に、合意内容と履行状況についての学習や分析を継続して、できる限り系統だって行うという方向を追求したいと思います。そして、こうした活動についての評価をMJPとともに行うことを意識化していきたいと考えます。
2002年11月、ボカコスタのコミュニティは、民衆教育を進める手段の一つとしてコミュニティラジオを設置するという提案をIMADRに提出してきました。ラジオを活用することによって、既存のメディアからは期待すべくもない和平合意履行状況や先住民族としての権利についての番組、コミュニティの人々にとって本当に必要な生活に関わる情報を伝達する番組、そして人々の意見交換、文化的表現の場を提供し、それを通じて広い意味での教育活動をしたい、というのがコミュニティからの提案です。これを基礎教育教室や和平合意学習と連携させながらとりくむことが、2003年度以降の活動の柱の一つとなっていくでしょう。
<プロジェクト運営とコミュニティの組織化>
まずプロジェクトの持続性確保については、外部資金に依存しなくても、コミュニティ内にあるリソース(人材、お金、知恵、労力、ネットワークなど)を生かしていくことができる内容と方法をもったプロジェクト像を描くという作業に着手することが必要です。上記の基礎教育教室の内容をめぐるコミュニティでの討論や、教育内容と方法についての調査、研究、討論がその基礎になります。
外部からの援助への依存性を打ち破るために、まずIMADRとしては基礎教育教室に参加する生徒から1ケツァルでもよいから授業料を徴収する、といった方法で意識的な働きかけを行っていきたいと思います。さらに今後の財政的支援は、持続的な活動を支える基盤作りに限定するといった方向性を目指していきたいと考えます。その考え方をコミュニティに理解してもらうための話し合いを継続して行うことが重要な課題になります。
一部のリーダーへの負担増の問題を解決するためには、MJPのコーディネーションの下、リーダー間の話し合いや、プロジェクトに関わっていないコミュニティのリーダーらとの交流を促進する活動を強化していくことが必要だと考えます。これはMJPのコーディネータとしての役割強化を意味し、そのための財源の拡大が必須の課題となります。
プロジェクトチーム活動
チームメンバーの役割とチーム内での位置が明確になり、一人一人が責任をもって主体的に活動を担う体制を作ることが課題です。そのために、テーマ別のサブチームを中心とした活動体制作りを目指したいと思います。また、現地の活動進捗状況のモニタリング、活動計画の立案などプロジェクト運営の中核的な仕事、チーム全体のコーディネーションなどを一部の固定メンバーが常に担うのではなく、より多くのメンバーが担えるようにメンバー間の経験や専門知識の共有化を進めていくことも課題です。
具体的活動計画
<基礎教育教室>
2003年度は引き続きボカコスタ、タカナ両地域で計7ヶ所で約100名を対象に教室を継続しますが、上記の課題を念頭に、以下のような活動にとりくんでいきます。
前半期の活動
- 教材と教授法の見直しを行う検討会と教師の再研修。
- 他の民衆教育・マヤ教育で使われている教材・方法論についての資料の収集、検討。
- 参考となりそうな他の教育プロジェクトの視察。
後半期の活動
- 費用がかからず、とりたてて専門知識を必要としない副教材、教授方法の工夫と導入。
- これらの活動を集約し、教育活動の内容と方法を討議、検討し、2004年度以降の計画を立てる。
<民衆教育>
- これまでの和平合意学習を中心とした教育活動に対する評価をMJP、コミュニティリーダーとともに行い、今後取り上げるテーマを設定する。MJPの活用報告において、こうした活動の評価を必ず含めるようにする。
- コミュニティの他の組織が行う教育的活動(例えば保健、アルコール問題など)に和平合意についての学習を取り入れるために、他組織との協議を行う。
- グァテマラにおける民衆教育の実践例について調査、研究を行い、プロジェクトにどう生かしていけるかを検討し、2004年度以降の計画を立てる。
<コミュニティラジオ・プロジェクト>
ボココスタではラジオ局設置準備委員会が2002年9月に結成され、今後、中心メンバーに対するラジオ局設置と運営に関する研修(既存のラジオ局見学を含む)、各コミュニティ代表者間での協議、グァテマラのコミュニティラジオ運動体との連絡などにとりくんでいくことになっています。
コミュニティからの提案を受け、IMADRは設置にあたって必要なコミュニティレベルでの準備活動についての助言、グァテマラ国内外の他組織とのネットワーク形成の促進、研修会の開催支援、資金・機器調達支援、そしてコミュニティラジオの意義と先住民族のコミュニティラジオ運動についての理解と支援を広げるための広報キャンペーンなどを行います。
広報キャンペーンでは、コミュニティラジオ運動がメディアのグローバル化状況の中、先住民族の自決とエンパワメントを実現するための活動の一環として位置するという視点に重点を置きます。具体的にはホームページ、『compa』、パンフレットなどの媒体を通じて行います(www.imadr.org/japan/project/guate/radioを参照してください)。
ラジオ局を開設し、その後もコミュニティ自身が独立して主体的に運営をできるようにするためには、資金・機器の調達から、コミュニティラジオが社会に認知され発展できるような環境作り(グァテマラ政府の政策やメディアのグローバル化状況の変革)の促進、番組作りについての先住民族コミュニティ間での経験交流、番組内容を充実させるための調査、研究など幅広い活動が必要になってきます。
そのためにコミュニティラジオ運動に携わる団体・個人、メディアのグローバル化と民衆のメディアの問題にとりくむ団体・個人、先住民族の権利に関わる団体など、広範な人々に協力を呼びかけていきたいと思います。
日本でのチーム活動
チーム活動は以下の主要テーマに沿って多様な活動を展開していくことを目指しますが、そのために各テーマ毎に「サブチーム」作りを促進し、メンバーが明確な位置付けをもって主体的に関われるような体制を作っていきます。テーマごとに2003年から2004年にかけて行いたい活動には以下のようなものがあります。すべての活動は定例研究会、ホームページ、『compa』等を通じてその成果を発表し、またスタディツアーのテーマへ反映させていきます。
(1) 先住民族の権利・自決権
・国連先住民族権利宣言起草、米州先住民族権利宣言起草、各国での先住民族の権利に関する法制度や政策など、先住民族の権利保障に関わる国際的な動きを追い、基本的な情報収集に努め、重要な動きを日本に紹介する。
・グァテマラにおける先住民族の権利に関わる政治動向(和平合意の履行を含む)、先住民族の運動に関する情報を収集しホームページ、『compa』などで紹介する。
(2) 先住民族と民衆教育
・グァテマラおよび世界の先住民族の民衆教育の理論と実践(教材、具体的な実施方法、教育活動のための人材育成、活動の組織化方法など)について情報を収集し、今後の調査・研究計画を立てる。可能ならば、グァテマラにおいて資料収集や他地域のプロジェクト活動訪問などの調査を行う。
・上記をもとにコミュニティおよびMJPとの討議を行う。
(3) 先住民族女性
・先住民族女性に対する複合差別について理論的文献、実態に関する資料、先住民族女性の運動についての情報を収集し、チームメンバー間で学習・研究を行い、翻訳資料や論考などをホームページ、『compa』に掲載する。
とりあげたいテーマには、共同体の社会組織内における女性の位置と役割、近代的開発プロセスが先住民族女性に与えている影響、西欧的フェミニズムと先住民族女性への複合差別の捉え方の関係、マヤのコスモビジョンや文化的価値に基盤を置いたジェンダー関係の追求などが含まれる。
・2003年3月、コミュニティの女性リーダーを招聘して日本各地で「先住民族女性のエンパワメントと『発展』」と題するスピーキング・ツアーを実施し、日本の中でマイノリティ女性への複合差別にとりくむ団体・個人に対して支援を訴える。
(4) 「開発」と先住民族
・プエブラ=パナマ計画(PPP)の進行状況と中米地域の運動体の動きについての情報収集、広報。
・PPPがグァテマラおよびメキシコを中心とした先住民族に与える影響についての情報収集。
・先住民族のエンパワメントと「開発」の関係についての理論、実態面での学習・研究。
(5) コミュニティラジオ
上記活動計画に沿った以下の活動。
・コミュニティレベルでの準備活動についての助言〜準備状況のモニタリング、計画立案における共同討議、研修会開催支援
・支援ネットワーク作り〜グァテマラ国内外のコミュニティラジオ、自由ラジオ運動への支援、専門的助言の呼びかけ
・広報キャンペーン
・募金活動
年間を通した主要活動は以下の通りです。
(1) 現地プロジェクト進捗状況のモニタリング
(2) 資金調達: MJPのコーディネーション、調査、研究能力の強化がプロジェクトにとって一つの鍵となる。そのために募金活動を強化する。
(3) コミュニティから女性のリーダーを招いた日本でのスピーキングツアー(2003年3月):IMADR日本委員会の複合差別プロジェクトとの共同活動として。
(4) ラジオ局設置キャンペーン〜広報、資金調達のための募金活動、グァテマラ国内外のラジオ放送の専門家から技術的支援を得るための活動、現地スタジオ建設、講演会など。
(5) 現地訪問・スタディツアー: 上記の主要テーマごとに具体的課題について現地調査の計画を立て、可能性を追求する。
(6) プロジェクトニュースレター『compa』(計3号):プロジェクト広報、研究成果発表の場・討議の場として。
(7) ホームページ:プロジェクト広報、キャンペーン、研究成果発表の場として。
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ボランティア(compa)に関するお問い合わせは、「グァテマラプロジェクト」と明記の上、下の連絡先まで。
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