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2006年連続合同学習会/先住民族とコモンズ
――開発(MDG)・自由貿易(WTO)・知的所有権から考える 
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第1回 2月25日(土)の記録

なぜ『先住民族とコモンズ』なのか?――テーマ概観

発題者: 藤岡美恵子(反差別国際運動グァテマラプロジェクト).

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報告文作成:竹尾カン

【全体の流れ】

@ テーマの概観について、レジュメに沿って藤岡さんが問題提起した。
A 今後の発題予定者からそれぞれのテーマについて簡単に提起された。
B 今後の進め方について、またどんなテーマを取り上げてほしいか、を出し合った。

学習会レジュメ

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@ テーマの概観について

@) コモンズという言葉は分かりにくい、という意見もあり悩んだが、カッコつき「財産」、有形無形の共有の財産という意味を込めた。
  
A) なぜいま「先住民族とコモンズ」なのか?→具体的に先住民族の知的財産が奪われている、

(ア)バイオパラシー(生物的海賊行為)、一例として、アマゾン先住民族が薬草から抽出した飲料=アヤウアスカをアメリカの企業が特許申請したことに対して(1984年)、先住民族は無効を申し立てたが却下された。

(イ) 先住民族の遺伝子そのものが狙われた例として、フィリピンのアエタ民族が、1991年のピナトゥボ火山の噴火の際、避難したところ、外国医療チームに、アエタの人々の遺伝子の採取を目的とした企業がアプローチしたケースがある。

(ウ) 先住民族の伝統音楽、手工芸などの文化作品が商業的に持ち出され、売買されているが、その恩恵にあずかっていない。

(エ) 博物館などが所有する遺骨、神聖な祭儀用具などが、持ち出されたままであり、返還運動が起きている。

(オ) 聖地・遺跡が観光地化されること。グァテマラのティカル遺跡をはじめとするマヤ遺跡群の例。

→これまでは、「先進国」により、先住民族が土地、テリトリー、資源、労働力を搾取されてきたわけだが、現在起きつつあることは、新「自由主義」の下で、制度化された(WTOの「知的所有権の整備」)開発の推進が、先住民族が長い歴史の中で培ってきた知的「財産」を、莫大な利益を産み出す対象としていること。「新たな植民地主義」が推進されつつある。どうやって先住民族の知的財産を守るのか。 

B) 認識のずれを防ぐためにも用語について整理したい。

(ア) コモンズ・・狭義の使われ方、共有地、入会権・・・。多辺田政弘氏は「地域住民の共的管理(自治)による地域空間と地域資源の利用関係」と定義している。信用の関係、文化的社会関係も含む。

(イ) 伝統的知識(Traditional Knowledge=TK)の説明。(レジュメの通りなので略す)

(ウ) 先住民族の遺産(heritage)
→国連人権小委員会特別報告:エリカ=ダエスによる起草に基づいて、説明があった。「すべての有形文化財と無形文化財、そしてビデオテープなどの記録媒体も含む・・」(別途、ダエス報告のコピーが配布された。)

C) 先住民族と知的所有権をめぐる問題について・・・

WTOは貿易と開発について、モノからサービスに拡大していこうとしている。(貿易関連知的所有権=TRIPsシステム)

1、製薬会社は先住民族が培ってきた薬草知識を採集して製品化し、莫大な利益を上げながら、それが先住民族の貢献であると認めていない。これに対する先住民族の対応は2通りあるだろう。

2、知的所有権として、権利を利用してその利益の分配を受けるという態度。

3、そうではなく、そもそもそうした「知的財産を私的に所有して利益を図る」ような世界観ではなく、制度自体を変えていくような対応。

・知的所有権とは、発明者、発見者を特定し、彼が特許権を得る、という前提に立つ西欧オリジンの思考であるが、先住民族の場合、例えば薬草に関する知識は不特定の集団的な伝承によるものであって、特定の立場(メディスンマン?)のものが、村の中で資質を備える者に伝えていく。また、遺伝子情報を部分的に操作して医療成果を得る、という西洋的方法に対して、先住民族は部分は全体の生態の一部であって、切り離しては成り立たないものと考える。

→かつて資本制が土地の囲い込みを推進したように、今、先住民族の「知」の囲い込みが進行し、一部がそれを所有し、莫大な利益を得ていく、それに対して、オルタナティブな、知の所有の概念そのものを問うということ。

D) 先住民族の権利との関係で、

(ア) 遺産・TKは土地との密接な関係があり、先住民族が土地、資源に対してコントロールできること、自決権を促進することが重要。

(イ) 生物多様性の保護は、文化の多様性があって成り立つ。口承、教育、言語の保護、 

(ウ) 先住民族のアイデンティティーの促進。

A 今後の発題予定者からの発言

木村真希子さん・・・4回目、インド北東部のトライブの伝統的な土地・森林資源の利用、のテーマで発題する。インド北東部、バングラデシュ、ビルマなどの山岳民族の移動耕作と、伝統的知識の植民地政府による利用について考える。イギリス統治時代の森林局の商業的樹木の伐採と栽培が現在も継続している。グローバル化との関係を考えたい。

苑原俊明さん・・・2回目、先住民族の文化遺産の保護――国連の動向、がテーマ。国連関連法、WGIPの動きなどについて。
  
中野憲志さん・・・7回目、先住民族とWTO。「資源」という言葉が適切かどうか。例えば、コロンビア内戦でゲリラ、政府、軍の争いに先住民族が巻き込まれる。そのとき、石油資源がゲリラのターゲットとなる。しかし先住民族は石油を「大地の恵み」「黒い宝石」と呼んで、資源とは考えない。それは資本制社会の発想。

WTOについて、'95年から11年、前のウルグアイラウンドは「関税と貿易に関する生産物についての枠組み」だったわけだが、WTOは「貿易とサービスに関する自由化」と言っており、「財とサービスの国際的商品化」という文脈の中で、先住民族の知的所有権が問題となっている。ところが、もっとも自分達の生活に関わることについて、先住民族は交渉、議論のプロセスから排除されており、勝手に決められている現状だ。

藤岡さん・・・第5回 「先住民族とMDG」について、国連MDG、貧困の半減については先住民族側からさまざまな意見、批判が出ている。どこに問題があるのか、深めたい。5月下旬の常設フォーラムの議題(木村さんが出席予定)であるので、注視したい。

小林純子さん・・・大きな話しになりがちだが、身近な問題でどうなるのか、を論議できないか。例えば、アイヌやアボリジニのアート、意匠の扱いをどうするのか、この観点から話してくれる人はいないか?

細川弘明さん・・・いろいろな問題を含むが、ひとつはお金の問題。例えばアボリジニ・アートの価格。1枚200万、ものによって500万円で売られている。これは先住民族の内部でも解決の難しい問題で、ひとつは正当な要求としてお金を求めるという態度、写真を使ってもいいが、お金の入るシステムが必要、という。反対に原理主義的対応があり、「一切NO!」ということで、アボリジニの間でのケンカの種だ。解決の道は私にも見えない。

ただ、アートが成功すると、コミュニティーは明るくなる。老人が元気になるし、地域が活性化する。観光化し、がめつくもなる。また、聖地には「秘密性」「男女の相違」「聖と俗」の厳格な違いがあり、これは西欧的価値観、近代的平等意識とぶつかる。(例えば)アボリジニは女がディジュリドゥを吹くことを絶対に許さない、触ることさえ許されない。

一方、日本では若者が男も女も吹いている。私はそれを否定できないし、アボリジニの文化に接触するいい機会だと思う。しかし、新「自由主義」はアカンけど、(私たち自身が先住民族の意思に合わせて)人間関係の自由化もアカン、となれるか・・

藤岡さん・・・伝統的知識をクローズすることでいいのか、どうバランスをとるのか。

苑原さん・・・沖縄の共有地の女性相続の訴えが敗訴となったことについて。

木村さん・・・沖縄・杣山の入会権を女性に相続させない慣習法は現・民法から見れば、おかしい。高等裁判所で原告の女性が敗訴したのは分からない。

藤岡さん・・・先住民族が国民国家に組み込まれていく過程で、かつての慣習法では女性も認められていたことが、国民国家の影響下でむしろ男性優位主義に変更された例も多い。先住民族の女性たちの中にはかつての自分たちのもっていた位置を回復させよう、という言説も多い。そもそも慣習法とはその時代によって変わっていくもので、固定的に捉えるのもおかしい。

中野さん・・・先住民族の文化がすべて家父長的といった思い込み、偏りが問題。

苑原さん・・・ジュマの教育、言語、文化の継承についての苦労はどうか?

竹尾・・・ジュマの現状はまず生存権そのものが脅かされていることにあり、土地収奪が進行するなかで、文化なども根こそぎ断絶の危機にある。民族の生存の道を教育に向けているのが寺子屋だが、そこでは征服者の言語を学ばないと、生き残れない、という現実がある。

バンドルボンのムルの人々にはアニミズムの慣習が見られるが、それが知的財産と呼べるものかどうか、そこまでの調査はないのでは。軍事占領下での土地収奪という状態を変えていかなければ、ジュマの文化、財産の復興はならない。

高橋満之さん・・・グァテマラでカナダの鉱山会社が金鉱山の開発に入ったが、それに対してソロラ県で先住民族の抗議行動が発生、軍隊が鎮圧に動いて死者が出た。UNDPが主体となりMDGを進め、現地政府と協議していくが、どこまで先住民族と協議しているか、疑問。

中野さん・・・とくに第三世界では、多国籍企業による開発に対して国家主権が歯止めをかけられない構造が生まれている。

藤岡さん・・・WTO方式の自由貿易協定が中米でも発効し、先住民族の権利擁護のための国内法制度が協定違反として制裁対象になるという圧力がかかると、もはやナショナルな法整備ができない状態になる。

細川さん・・・JICAの先住民族ガイドラインは稚拙だ。世銀、アジ銀のガイドラインは10年前よりは大分ましになった。ヨーロッパの先住民族ルールが一番ましであるが、しかし今は公から民間へ開発がシフトして歯止めがかからない。民間企業は先住民族の中から受け入れる相手を選んで開発に入る。ここから先住民族内部での分裂が起きてくる。

高橋さん・・・JICAには環境配慮ガイドラインがあり、地域(先住民族)の賛同が得られない場合、事業をしない。そこはかなりはっきりしている。

細川さん・・・その他のテーマとして、環境、国立公園管理。例えば知床など、誰かやる人はいないか?

小林さん・・・この学習会は予算がないので、遠い人は呼べない。細川さんはどうですか?
*ここで細川さんが京都から月2回東京に来ることが分かったところで時間となり、終了しました。

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