積年の願いにもかかわらず、依然として日本には人権侵害救済法および国内人権機関が存在しないことを私たちは憂慮します。差別や人権侵害の被害者の多くが、現行の法律や制度によっては救済されず泣き寝入りを強いられている現状に鑑みても、迅速で簡易に救済を求められる実効性のある国内人権機関の設置が必要です。
昨年10月に衆議院解散に伴い廃案になった「人権擁護法案」に関し、政府は今秋の臨時国会での法案の再提出を行う意向をもっているといわれていますが、私たちは、マスメディア規制条項の削除などの一部手直しでの対応ではなく、真に国内における差別撤廃と人権侵害の克服に役立つとともに「国内人権機関の地位に関する原則(パリ原則)」をふまえた「人権侵害救済法」の制定が不可欠だと考えています。
国際的には、多くの国で実効性のある国内人権機関が次々に設置され、国際的な人権基準を各国内レベルで実施することにおいても大きな役割を果たしています。そのような潮流を踏まえ、私たちはこれまでに、1993年に国連総会が採択したパリ原則の内容や、主要な国際人権条約機関による関連の勧告等について学習し、また、国連人権高等弁務官事務所やアジア太平洋国内人権機関フォーラム(APF)、韓国、タイ、ニュージーランド、ネパール、フィリピンのアジア太平洋地域各国の国内人権機関の活動からも多くを学び、またさまざまなアドバイスを頂きました。
その経験からも、パリ原則が規定する——1)政府からの形式上ならびに実際上の独立性、2)委員の構成などにおける多元性、3)国際的な人権基準にもとづいた広範な責務、4)調査のための適切な権限、5)十分な財源——を確保することが必要であることを確信します。
部落解放・人権政策確立要求中央実行委員会が発表している「人権侵害救済法」(仮称)要綱・試案ならびに研究者や実務家によってまとめられた同補強案は、そうした認識を踏まえて作成されたものであり、私たちはそれらを支持します。上記をふまえ、私たちは以下のことを要請します。
1. 真に国内における差別撤廃と人権侵害の克服に役立つとともにパリ原則に合致した国内人権機関の設置を中心とする人権侵害救済法の制定を早期に実現すべく、政党としてイニシアティブを取ること。
2. その際に、自然廃案となった人権擁護法案に対して市民社会が示していた問題点を十分に考慮するとともに、部落解放・人権政策確立要求中央実行委員会が発表している「人権侵害救済法」(仮称)要綱・試案ならびに研究者や実務家によってまとめられた同補強案など、民間団体や専門家による調査・研究の蓄積を十分参照し、活用すること。また、立法過程において国内のNGOとの協議を行なうこと。
3. 日本政府が国連人権高等弁務官事務所やアジア太平洋国内人権機関フォーラムなどと積極的に対話し、国際的に蓄積された経験に学ぶようはたらきかけること。
以上、私たちは、差別と人権侵害の被害者が安心して容易に、そして迅速に救済をうけることができるようになり、また、設置された国内人権機関が日本の人権政策の発展に大きな役割を果たし、国際的にも貢献することを切に願います。
2004年9月21日
第13回ヒューマンライツセミナー参加者一同および第13回ヒューマンライツセミナー実行委員会
実行委員会構成団体:反差別国際運動日本委員会(IMADR-JC)・世界人権宣言大阪連絡会議・部落解放同盟中央本部・同和問題に取り組む全国企業連絡会・『同和問題』にとりくむ宗教教団連帯会議・全日本自治団体労働組合(自治労)・日本教職員組合(順不同)