外務大臣 麻生太郎 様
2002年2月の停戦合意によって、約20年間にわたる紛争の後ようやく「平和」を手にしたはずのスリランカの人びとが、2005年末以来、スリランカ政府と反政府武装勢力であるタミル・イーラム解放の虎(LTTE)の間における内戦の再発という危機的状況に直面しています。とりわけ2006年4月以降、北・東部における空爆、銃撃戦や市民も巻き込んだ無差別攻撃、報復攻撃が頻発しています。
統一国民党(UNP)政権が去った後、シンハラ至上主義勢力が台頭し民主主義が脅威にさらされています。ラジャーパクサ大統領は、選挙における支持を得るために、人民解放戦線(JVP)ならびに国民遺産党(JHU)と、中央集権制を支持し連邦制度を認めないとする合意を締結しています。このことは大統領がマイノリティの問題を受け付けないことを意味しています。そしてUNPが分断を工作し、カルナ派がLTTEから分離したことについて、LTTEは怒りを露にしています。その結果、北部において大統領選挙がボイコットされ、ラジャーパクサ大統領が選出され、LTTEに対して強硬姿勢をとる政権が誕生したのです。人権の原則に明らかに違反する特別法を制定するなど、政権は非常に専制的になっています。
このことは、人道と人権の重大な危機につながっています。政府軍と反政府勢力の双方によって、2006年4月から現在までの間に、一般市民を含む約4千人が命を奪われ、約12万人以上が国内避難民となり、1万2千人が隣国インドに逃れ難民となり、千人以上のタミル人が「失踪」しています。NGOへの脅迫や嫌がらせも相次いでいます。平和や人権のために活動する人びとは反逆者呼ばわりされ、生命の危機にさらされています。国会のNGO選考委員会は、NGOの活動を過去10年に遡って調査し、NGOの活動に不当に干渉しています。
ご周知のとおり、1983年から約20年間続いた内戦は、人口の多数を占めるシンハラ人が、少数のタミル人の政治・行政への参加、言語や宗教の保護を保障しないことへの不満を背景にLTTEが台頭して始まり、続いてきました。その20年間で約6万4千人が犠牲となり、約100万人が国内避難民となり、約100万人が国外に逃れ難民となり、約6万人が強制的に「失踪」させられています。LTTEもまた、数々の暗殺や暴力を行なってきました。
2002年2月の停戦合意後、和平交渉が進まない中、現地の活動家たちは、初めて芽生えた平和への機運を少しでも人びとの実感につなげるよう懸命の努力を続けてきましたが、そこに2004年12月のインド洋大津波が襲いました。津波は、少数のタミル人やムスリムが多い北・東部で、紛争の傷跡に更なる痛みを与えました。過去の紛争によって数度にわたり住む土地を追われた大勢の人びとが、津波によってまたしても避難生活を強いられ、そして今回の内戦再発の危機でまた避難民や難民となっています。特にアンパレやバティカロアの避難民キャンプには、しばしば放火や爆撃が行なわれており、政府軍による村々への爆撃も続いています。
スリランカの人権団体、平和団体は、平和構築や津波被災からの復興においてマイノリティが排除されないよう、また、マイノリティの人びと自身が困難から立ち上がることができるよう活動してきました。今回の内戦の再燃は、そういった人びとのこれまでの地道な努力や、日本政府をはじめとする各国政府が供与してきたこれまでの援助の成果を根底から覆すものです。
日本政府は、2002年の停戦合意後の期間において、「スリランカ復興開発に関する東京会議」の開催などを通じて重要な役割を果たしてこられました。その間は殺害や人権侵害が減少し、スリランカの人びとは草の根レベルにおけるさまざまな活動を展開することができました。私たちはまた、明石康政府代表(スリランカの平和構築および復旧・復興担当)や横田洋三教授(大統領諮問委員会の活動を監視する専門家国際グループのメンバー)を通じた、スリランカの平和構築と人権確立に向けた日本政府のこれまでの努力と貢献に深く感謝しています。そして、日本政府がこの問題により一層積極的に関与することを期待しています。
日本はスリランカの友好国であり、欧米諸国とは違いアジアの友人として、政府開発援助(ODA)などを通じて良好な外交関係を結んできました。スリランカ政府も、欧米諸国よりもアジアの友人としての日本政府の進言には注意深く耳を傾けることでしょう。スリランカ及びアジアの市民社会の人びとは、国連人権理事会の理事国となり、また国連安全保障理事会の常任理事国入りを目指す日本政府は、アジア地域、とりわけスリランカを含む南・東南アジア地域において意義ある役割を果たせるものと期待しております。
つきましては、停戦合意が守られ、武力衝突回避が合意され、25年間にわたる内戦状況に一刻も早く終止符が打たれるよう、日本政府としてスリランカ政府や国際機関に対して出来る限りのはたらきかけを行なって頂きたく、以下、要望いたします。
1. この度の事態に対して、日本政府の有効な立場を最大限に利用して、スリランカ政府に対して人権状況や人道上の危機に関する懸念を提起し、また、スリランカ政府が関係諸国との国際レベルでの建設的対話を進展させるよう、指導的役割を果たして頂けますよう、お願い致します。同時に、スリランカのNGO・市民社会の活動が、脅迫や暴力から保護されるよう、要求して頂ければ幸いです。
2. 継続する人権侵害に対する国際的監視機能の強化を求め、また国連人権高等弁務官事務所のスリランカにおける活動の拡大を支援くださいますよう、お願い致します。現在開催されている国連人権理事会第4会期において、その必要性に言及して頂ければ幸いです。
以上
2007年3月29日
反差別国際運動(IMADR)
理事長 ニマルカ・フェルナンド
部落解放同盟中央本部
執行委員長 組坂 繁之(IMADR理事)