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グローバル化とラテンアメリカの先住民族

昨年は、国連「世界の先住民の国際10年」(以下、第1次国際10年)最終年であり、国連で議論されている「先住民族の権利宣言」の採択が目標とされた年でもあった。 1993年の「国際先住民年」以来、久しぶりに先住民族のことが日本国内でも取り沙汰されることが多かったように思う。権利宣言は全45条のうちたった2つの条文しか採択されないまま、今年、2005年1月からの10年間が「第2次世界の先住民の国際10年」と決まった。

ラテンアメリカの国々は周知のように、先住民族の人口比率は多いが、政治・経済を握っているのは一部の白人層やメスティソである。その中にあって、1994 年1月1日に起こったメキシコの先住民族の武装蜂起は、自由貿易協定に異議申し立てを行ったものであり、折しも、先住民族の権利回復のために国連が定めた第1次国際10年の始まり(1993年12月10日)にあたって象徴的な出来事だった。

以後、サパティスタ民族解放軍が叫んだ「もう、たくさんだ!」は、先住民族が物事を発するときに合言葉のように冠されてもいる。のちに「サパティスタ運動」と呼ばれるようになるこの出来事は、世界の先住民族やその支援者、ことにラテンアメリカの先住民族の運動に多大な影響を与え、先住民族による発信や活動を推進するうえでの大きな力になり得たといっても過言ではないだろう。

本書のもとになっているのは、昨年開催された6回連続講座「無数の『もう、たくさんだ!』の声が聴こえる グローバル化に抵抗するラテンアメリカの先住民族」で、各回の講師の書き下ろしによって刊行された。私は全6回のうち、どうしても都合がつかず1回だけ参加することができなかったが、連続講座は政治・経済・社会・文化・ジェンダーなど多方面にわたる角度から、メキシコ、エクアドル、グァテマラ、ボリビアの先住民族とアフロ系コロンビア人の動向が報告され、刺激的な内容だった。連続講座を聴講した者にとっても、新たな書き下ろしで読むことができるのはうれしいことである。

第1 次国際10年は、世界的にみて先住民族の権利回復に関してあまり進展がみられなかったという評価はあるが、ラテンアメリカに関していえば、本書によって、先住民族の政治参加が進んでいる様子が見てとれる。そして、グローバリゼーションが目に見える形で進むなか、開発政策の影響をもろに被っている先住民族社会において、自らの存在のあり方と自分たちの社会的立場の舵取りを模索している様子が浮き彫りにされている。閉塞感のある今の社会にあって、先住民族が自らの意思を主張をしている現在、私たちは、彼ら彼女らの声に無関心ではいられない。(先住民族の10年市民連絡会 小林純子)

目次

  • はじめに (太田昌国)
  • サパティスタ運動の十年が提起したもの (小林致広)
  • サパティスタ蜂起の十周年/十年間のバランスシートの枠組み/言葉=対話を機軸とする十年間の歩み/先住民も小規模企業家に?/われわれぬきのメキシコ?/人々の意思に従って統治する/ゆっくりした自治構築の試み
  • 政治参加から社会変革へ―エクアドル先住民族の挑戦 (新木秀和)
  • 政治参加の進展―「民主化」は誰のために/多民族国家と多文化主義-―「国民」の中身を問う/社会変革への試練―オルタナティブと脱植民地化
  • 鉱山にNO、生命にYES―コーヒー栽培による森林保護とエコツーリズム (藤岡亜美)
  • ナマケモノ倶楽部とエクアドル/フニン村の鉱山開発問題/生態系に配慮した発展を目指すコタカチ郡/三つのオルタナティブ/日本とのつながり
  • 先住民族の「能力」とグローバリゼーション―開発研究からのアプローチ (狐崎知己)
  • 問題の所在/先住民族と開発/グローバリゼーションと貧困
  • 先住民族の権利と鉱山開発 (青西靖夫)
  • グァテマラ内戦と先住民族の権利/鉱山開発と先住民族運動/イサバル県におけるニッケル鉱山開発/先住民族運動の展開と政府の対応/何も知らない、何も相談されていない
  • マヤ民族のスピリチュアリティについて (実松克義)
  • 二〇〇三年十月政変から改憲議会へ―ボリビア政治情勢への視点 (藤田 護)
  • 「長い十月(largo octubre)」/ボリビアの社会運動の特徴/改憲議会に向けて
  • 暴力状況下の民族創生―アフロ系コロンビア人のたたかい (石橋 純)
  • コロンビアにおけるアフロ系住民/混沌とする暴力状況/憲法改正と一九九〇年代の民族創生
  • 自由貿易協定と先住民族女性 (藤岡美恵子)
  • 自由貿易協定の女性への影響/土地・資源と先住民族女性/先住民族女性と土地・資源管理/伝統工芸と知的所有権/自由貿易体制と女性の雇用/国内法と自由貿易協定
  • ポスト九・一一における米国の中南米政策と先住民族 (中野憲志)
  • 「対テロ戦争を戦う民主主義構築と開発戦略」への変質/軍事化するブッシュ政権の中南米政策/先住民族の権利保障と米国/おわりに―中南米の多民族・多文化社会への道と米国


    ※<グローバリゼーション>と官製の<多文化・多民族主義>に抵抗するメキシコ、グァテマラ、エクアドル、ボリビアの先住民族とアフロ系コロンビア人の最新動向を分析。
    気鋭のラテンアメリカ研究者とNGOアクティビストの共同研究書。
    2004年、6回にわたって行った同タイトルの連続講座から生まれたブックレットです。

    2005年4月25日刊行
    編集 藤岡美恵子・中野憲志
    発行 反差別国際運動(IMADR)グァテマラプロジェクト
    発売 現代企画室
    定価 1,000円+税、124頁


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