【セクション説明文:立ち上がりつながるマイノリティ女性】

IMADRでは、あらゆる差別と人種主義の撤廃をめざす活動を行なう際に、これまで抜け落ちがちであったジェンダーの視点がテーマ横断的に貫かれるよう意識し、差別と抑圧の構造に迫ることが重要であると考えてきました。特にマイノリティに属する女性が、マイノリティであり女性であることで複合的な差別を被っているという認識から、IMADR-JCでは、マイノリティ女性に焦点をあて、先住民族のアイヌ女性、被差別部落の女性、在日朝鮮人女性、沖縄女性を中心に、問題解決に向けた様々なとりくみを行なっています。

マイノリティ女性に対する複合差別
歴史的に、ジェンダー差別と、人種差別を含む、その他の形態の差別は並列的に考えられてきました。しかし、年齢、障害、社会経済的地位、特定の民族的グループへの帰属などの要素が、性別にともづく差別と複合し、女性のエンパワメントや地位向上を幾重にも妨げる可能性があることが、近年国際的にも認識されてきました。国連は、2000年に「ジェンダー差別と人種差別に関する専門家会議」を開催し、その報告をまとめました。また、人種差別撤廃委員会は、「人種差別のジェンダーに関連する側面に関する一般的勧告25」の中で、「人種差別が女性と男性に等しくまたは同じような態様で影響を及ぼすわけでは必ずしもない」とし、時に女性にのみ向けられ、「女性に対して独自で特別な影響を及ぼすことを認識」し、女性が直面している不利益、障がい、および困難な問題を評価し、これを監視する体系的かつ一貫したアプローチを発展させることを勧めました。

一方、日本国内では、複合差別に関する取り組みは、ほとんど行なわれていませんでした。IMADR-JCは1999年、マイノリティ女性に対する複合差別の実態把握と問題解決のための調査・研究活動・啓発・ネットワークづくりを目的に、マイノリティ女性に対する複合差別ネットワークを立ち上げ、マイノリティ女性の経験共有と議論を中心とする研究会を開催し、その結果を、『マイノリティ女性が世界を変える!マイノリティ女性に対する複合差別』として発行しました。後に実施する実態調査は、その話合いの中で、女性たちの共通の課題としてあげられたものです。

マイノリティ女性の視点を政策に!社会に!
女性差別撤廃条約日本報告書審査を通じて

2003年7月に女性差別撤廃委員会第4・5次日本報告書審査が行われるのにあたり、審査の過程をマイノリティ女性が抱える課題の解決への糸口とすることをめざし、様々な取り組みを行ないました。「女性差別撤廃条約の精神は私たちには届いていない」「私たちは存在している」とあえてマイノリティの女性がいわなければいけない状況があったからです。女性運動との協働をめざし、IMADR-JCは日本女性差別撤廃条約NGOネットワーク(JNNC)の結成・運営に積極的に関与し、国連や政府への働きかけを共に行なう中で、女性運動に関わる女性たちがマイノリティ女性の課題への理解を深め、共通の課題に共に取り組む機会となりました。

女性差別撤廃委員会に対しては、部落女性、在日コリアン女性、アイヌ女性、障がいを持つ女性やシェルターをはじめIMADR-JCから、事前にNGOレポートを提出し、ニューヨークの国連本部で行なわれた審査にも部落女性、アイヌ女性が参加し、現地でブリーフィングを行ない、委員に積極的にロビーイングを行ないました。

その結果、審査では委員の半数がマイノリティ女性に関する言及を行ない、2003年8月に委員会から日本政府に送られた最終コメント(勧告)では、マイノリティ女性の状況についての情報の欠如と、教育・雇用・健康・社会福祉・暴力などに関して、自らの集団内と社会で直面しうる複合的な形態の差別と周縁化に懸念が示され、次回報告書では、それらに関する「分類ごとの内訳を示すデータを含む包括的な情報」を提供するよう求められました。なお、この点は、人種差別撤廃委員会の第1回日本報告書審査を受けて同委員会が2001年3月に日本政府に送った最終見解でも勧告されています(詳細は右記関連資料参照)。

マイノリティ女性の視点から審査を活用したその軌跡をまとめ、複合差別に関する国際的重要文書を収録し、『マイノリティ女性の視点を政策に!社会に!女性差別撤廃委員会日本報告書審査を通して』として出版しています。

立ち上がりつながるマイノリティ女性
アイヌ女性・部落女性・在日朝鮮人女性によるアンケート調査と提言

「自分たちの問題解決につながる調査を」との思いが出発点となり、女性差別撤廃委員会からの勧告が追い風となって、アイヌ女性・部落女性・在日朝鮮人女性が、自分たちの実態に関するはじめてのアンケート調査を遂に実現させました。3つの主体は2004年から2005年にかけて、それぞれ違う方法で調査を実施しましたが、これは教育・雇用・社会福祉・健康・暴力の分野で共通設問を設定し、調査を社会運動として展開したこれまでにない調査です。調査を実施した北海道ウタリ協会札幌支部、部落解放同盟中央女性対策部、アプロ女性実態調査プロジェクトは、IMADR-JCと共に、調査結果に基づいて提言を作成し、2007年9月には、7つの省庁に対し政府交渉を行ないました。政府には、本来国の責務として行なうべきマイノリティ女性に関する調査を実施する意志がありません。そのことを含め、提言の中身を、一つひとつ実現していくためには、より大きな声が必要です。それは、私たちが生きる社会のありようをよりよく変える営みでもあります。立ち上がりつながる女性たちと共に、心ある皆さんとその歩みを進めていきたいと思います。

アンケート調査に取り組んできた女性たちの思いと調査の意義や結果など、詳細は右の関連文書・書籍をご覧下さい。

マイノリティ女性によるさらなる運動つくり
アンケート調査を通じて、女性たちは多くの出会いと発見を重ね、エンパワメントされてきました。その女性たちが、共通の課題に共に取り組むことを通して築いてきた協働のネットワークの基盤を強化し、さらに多様なとりくみを行なっている女性たちとともに、今後の取り組みを展望すべく、第1回マイノリティ女性フォーラムを2007年10月に札幌で開催しました。全国から集った100名の女性たちのパワーに溢れる集いとなり、女性たちが今後共に取り組みたいと思っていることが多数提案され、次の世代と共に2回3回とフォーラムを継続していくことが約されました。今後、さらにネットワークの裾野を広げながら、海外で差別と闘うマイノリティ女性とも経験交流を深めて、マイノリティ女性の反差別の国際連帯を築いていきます。

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2007年08月30日

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