ドイツ・スィンティ・ロマ資料文化センターによる移動式展示「ロマとスィンティに対するホロコーストと現代ヨーロッパにおける人種主義」が、2007年1月30日から2月23日にかけてニューヨークの国連本部にて開催されました。
初日の開催式では、ドイツ・スィンティ・ロマ中央委員会ならびにヨーロッパにおける国内スィンティ・ロマ組織*より、潘基文国連事務総長への嘆願書が提出されました。同嘆願書は、1000万人から1200万人に達するヨーロッパ最大のマイノリティであるロマとスィンティを人種差別と偏見から保護する体制の強化を求めています。以下はその抜粋・要約です。
ドイツ・スィンティ・ロマ中央委員会ならびにヨーロッパにおける国内スィンティ・ロマ組織より、潘基文国連事務総長への嘆願書(抜粋)
ヨーロッパ各国のロマとスィンティの代表者は、国連に対し、ヨーロッパおよび世界各地の同マイノリティの人権を守る取り組みを強化するよう要請する。その意味で、この問題に従事する国連特別代表を新たに設けるよう求める。国連事務総長には、その任務を同マイノリティを代表する適任者に与えることが望まれる。
ロマとスィンティは、何世紀にもわたり、すべてのヨーロッパ諸国および世界各地でそれぞれの国の国民として生活を営んできた。われわれは、ユダヤ人と同様、「人種的に劣等」としてナチスの占領地で迫害と殺戮の標的となり、約50万人の命が奪われた。現在でも、毎日のように人種主義的攻撃にさらされ、またゲットーのような居住地区へ強制的に移住させられることがしばしば起きている。子どもたちは、マジョリティの学校の基準を大きく下回るゲットーの特別学校などで学ばされ、将来平等な権利を手にする可能性を奪われている。多くのロマとスィンティが電気、水道、下水といった基本的な生活基盤を利用できない現状は、アジア、ラテンアメリカのスラムで生活をしている何百万人の状態に匹敵し、人権擁護を国の基盤とするヨーロッパ諸国にとっては恥ずべきスキャンダルである。
国連は、人種差別撤廃条約、マイノリティ権利宣言などの重要な条約ならびに決議、その履行を促す諸機関によって、ロマとスィンティを含むマイノリティの権利の保護および促進にむけた基本的な環境の整備などを行なってきた。しかしながら、多くの地域で、ロマとスィンティの人権保護・支援プログラムは不十分なものとなっている。ロマとスィンティに関する問題を専門的に扱う国連特別代表には、同マイノリティを代表する政治家と緊密に協力し、具体的な解決策を練り上げることが望まれる。
人種差別からの保護策としては、差別に動機付けられた犯罪の効率的取り締まり・厳罰化、インターネットによる差別扇動の規制などが求められる。また、ロマとスィンティが平等な機会を得られるための重要な取り組みとして、将来的にゲットーの撤廃を視野に入れた住宅の整備、教育の場における差別撤廃、教育・雇用プログラムの構築などが挙げられる。さらに、ロマとスィンティに対する人種差別が根強く残っている原因の1つに、国家社会主義者が形成した「根無し草・放浪者」といった否定的な固定観念がある。国際機関がこのような固定観念を強めるような表現を行なわないこと、多くの国々におけるロマとスィンティの歴史的・文化的貢献を、包括的な教育政策を通じて各国のマジョリティ社会に伝えること、ロマとスィンティを一般化し、犯罪者扱いするメディアの表現を法的に規制する措置が必要である。
*ドイツ・スィンティ・ロマ中央委員会のロマニ・ローゼ議長(IMADR理事)を含む5者による共同提出。
2007年01月30日